第17話
パリンッ!
拠点に入ると、奥の窓からアックスが突入してきた。まず、敵の位置を把握する。右側に3人、左側に2人だ。俺は左側の2人を目標に定め、射程距離まで近づく。
(2人の距離が近い、ウィンドカッターでまとめて切断してやる)
敵は闘気を纏ってない。襲撃に驚いてか、闘気を使えないのかは分からないが、チャンスだ。
(2人まとめての攻撃は初めてだ、1発のウィンドカッターでは殺しきれないかもしれない)
念のため、魔術を2重発動する。
(ウィンドカッター)
「ヒッ…」「ヤメ…」
左手の掌と手首の魔法陣からウィンドカッターがそれぞれ射出され、イメージ通り2人を切断する。
右手の魔法陣は魔道具魔力由来のものだ。必要魔力が48と高いので数発しか撃てない。多重発動時以外は温存する。
(左は片付いた。右は?)
右側は、入り口付近にいた1人をちょうど倒したところだった。ロングソード持ちのカイが敵を抑え、残りが防御できないところを刺す。いつもの1人に対して多数で対処するスタイルだ。闘気持ちでも簡単に倒すことができる。
アックスは右側の1番奥にいた人攫いと対峙している。足を切りつけることに成功したようだ。敵は緑色の闘気を纏っているが、なんとか対処している。
(後は2人…まずは手負いの方からだな)
魔法陣を充填しながら、アックスの方に向かう。緑色の闘気使いとは、一度戦ったことがある。赤い闘気使いと戦闘力は変わらない。カイ達は残る1人を抑えるようだ。
(まずいな…黄色い闘気…)
カイ達が対峙している細身で長身の人攫いが黄色い闘気を纏った。緑色の闘気使いを速攻で倒し、カイ達に加勢しよう。
アックスと緑の闘気使いへと駆ける。射程距離内に入ってもアックスにも魔術が当たりかねない。俺が近づいていることに気づけば、距離をとるかもしれない。
「アックス!」
アックスがこちらを確認し、呼びかけに応じて、敵と距離をとる。俺は走りながら敵に手を向け魔術を2重発動する。
(ウィンドカッター)
体が切断されたのを視認してから、カイ達の戦況をみる。
その瞬間、カイが細身で長身の黄色い闘気使いに吹き飛ばされていた。
ドン!
(あの細身で一方的にカイを吹き飛ばすだけのSTRがあるようには見えない…黄色い闘気によるステータス2倍はだてじゃないな)
全員が1度距離をとり、カイ以外の4人で四方を囲む。
(魔術を打ち込む隙が無い、手練れだ…)
「もう、俺以外は全滅か……、ボスが戻らねぇのも、お前らの仕業か?」
「……そうだと言ったら?」
ランが会話に応じてる隙に魔法陣を充填する。
MP 6+111/111、魔道具内残存自己魔力40、魔道具魔力50
充填済み魔法陣4
「……いや……嘘だな…殺しは相当上手いみたいだが、闘気を纏えないような奴らがいくら束になったって、ボスは殺せねぇ…手練れが隠れてんだろ?」
吹き飛ばされていたカイが立ち上がり切りかかる。ライとランがそれに呼応してとびかかる。黄色い闘気使いでも、3人に纏わりつかれるのは嫌みたいだ。1人1人吹き飛ばして距離をとっている。
「ウィンドバースト!」
全員吹き飛ばされたところで、カイ達に追撃が行かないよう魔法で牽制する。敵を暴風が襲うが闘気に阻まれる。そのまま敵が抜け出し俺に迫りくる。
(魔法使いはモロい癖にうざいからな。倒しに来るのは当然か)
ライが間に入って止めようとするが、なすすべなく再度吹き飛ばされる。
「ウィンドバースト!」
ライによって敵の足が止まったところに、もう一度魔法を放つ。今度は魔法の2重起動だ。両手から放たれたウィンドバーストが黄色い闘気を剥がす。
左手でも魔法を放ったことにより、左手の魔法陣が機能を停止する。魔法陣の下地の魔力が魔道具魔力から自己魔力に置き換わって、インクの自己魔力と質が同じになり、魔法陣を識別できなくなったためだ。
再度魔法陣を充填しながら、ウィンドカッターの有効射程に入るよう敵に迫る。敵は闘気を剥がされたことに驚きつつも闘気を纏い直しているようだ。その隙に、有効射程に入ることができた。敵は咄嗟に距離を置こうとするも、タイミングよく投げられたアックスのナイフにより阻まれる。
(今だ!ウィンドカッター!)
「ぐっ……」
ウィンドカッターの魔術を4重起動する。2発が闘気を剥がし、残る2発が敵を刻む。
「……」
(敵が刻まれ動かない…流石に死んだようだ……勝利だ)
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