第16話


翌日、馬車でキャンプに向かう。御者はカイとコージだ。

キャンプに近づいたら、馬車を隠し、人攫いの拠点に襲撃をかける。子供たちは、馬車に留守番だ。馬車の中には戦利品もあるので、護衛は必須。話し合って、コージがすることになった。


「拠点の戦利品は僕の分も含めて等分だよ」

「分かってるよ」


コージがカイに訴え、了承する。


(なにかあってもいいように、馬車に魔道具の地図を合わせて、いつでも確認できるようにしとくか)


コージにも伝えておこう。


「なにか、あったらすぐ駆けつけるから、できる限り粘ってくれ」

「どうやって……新しい魔法でも登録した?」

「まぁ、そんな感じ」

「…え?…」


コージが驚くが、スルーする。


「じゃあ、行くか」


子供たちとコージの4人に別れを告げ、自分を含めたカイ、ライ、ラン、アックスの5人で人攫いの拠点に向かう。拠点の場所は、カイとアックスが知っていた。あの夜、馬車に乗せられてからも、しっかり風景を覚えて、場所を推測していたらしい。

戦闘になる前に魔力を確認しておくか。


MP 111/111、魔道具内残存自己魔力100、魔道具魔力200


昨日寝る前に、魔道具に自己魔力を入れておいた。風魔術換算で20発程度撃てる。負けることはないだろう。

拠点付近で身を隠し、作戦会議をする。


「俺とライ、ランは3人1組で行動する。ユザナとアックスは1人で行動したほうが楽だろ?」


カイの提案に、俺とアックスは頷く。

カイ達の装備は、カイがロングソード、ライがショートソード、ランがショートソードにラウンドシールド、アックスがナイフ数本だ。アックスは外套を羽織っているため、実際武器がどのくらいあるか、分からない。防具は全員、革鎧だ。


「よし、突入したら俺たちは右側から攻めるから、ユザナは左側を頼む。アックスは攪乱を頼むぞ。敵の人数は2人以上だ。6人以上いたときはすぐ撤退しよう」


まとめると、俺は1人で左側の敵を優先して倒せばいいらしい。敵6人以上で撤退。


「6人以上?」

「ユザナは1回の戦闘で8人も殺したんでしょ?私たちもいるんだし10人くらいいけるんじゃない?どうなの?」


ランが俺に問いかける。ランが俺の名前を知っていたことに驚くがすぐに肯定する。きっとカイがみんなに俺の名前を知らせたのだろう。敵が10人なら全員闘気使いでも、魔術の2重発動で、ちょうど殺せる人数だ。今回はカイ達がいる。魔法陣の充填も、魔術の標準も前回の戦闘よりずっと楽にできるだろう。


「10人ならいける」

「んー。じゃあ、8人以上で撤退だな。安全にいこう」

「了解」


カイは慎重な奴だ。だから、スカベンジャーとして生きてこれた。本当は6人以上での撤退にしたいはずだ。


「俺が偵察してくるか?」


偵察が得意なアックスが提案する。


「俺が奴らの人数を確認する」

「危険じゃないか?」

「300数えて戻らなかったり、敵の拠点が騒がしくなったら突入してくれると助かる。敵が8人以上なら俺をおいて撤退してくれていい」

「それなら、大丈夫か……8人以上でもアックスが逃げるまで撤退しないよ」


俺を含め4人ともアックスの提案をのむ。


「じゃ、早速行ってくる」

「ちょっと待ってくれ、準備する」


アックスを引き留め、戦闘の準備をする。薄くなっていた両腕のウィンドカッターの魔法陣をインクで直し、取り出しずらい魔道具魔力も回収し、左手に流しておく。


「よし…準備万端、行っていいぞ。一応、危険だから戦闘中は俺の3m内には、入らないようにしてくれ。魔法が当たりかねない」


俺以外の4人とも頷き、アックスが偵察に行く。頭の中で300数える。


「それなんなんだ?」


ライが俺に尋ねるが、頭の中で数を数えてるので無視する。

(こいつ300数えてるのか…?)


「その、手にかかれてるやつだよ、なんなんだ?」


ライがうるさいので適当に答える。


「魔法陣だよ。後は秘密」

「魔法陣!?もっとよく見せてくれ!」


カイとランも魔法陣に驚いてはいるが、数を数えているのか声には出さない。ライには、めんどくさいので手のひらを向けて魔法陣を見せてやり、再度数を数える。

200程数えたところで、アックスが戻ってきた。


「窓から確認できたのは4人、音で感じたのは5人で7人以上はいないね」

「じゃあ、5,6人ってところか。よし、突入しよう!さっきの作戦通りにな」

「俺は窓から突入するよ。そっちが入ったタイミングで、こっちも突入するから、100数えてからにして」


そう告げるとアックスは1人で移動し始めた。俺たちは100数えてから移動することにした。

ドアの前にたち、突入を仕掛ける。カイから入るようだ、その後ろに俺、ライ、ランと続く。魔法陣を充填しておく。


(戦闘が始まる。何気に初めての味方がいる戦いだ。魔法の誤射は絶対しないようによく狙って撃とう)


ドン!

カイが勢いよくドアを開け放つ。

戦闘開始だ。

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