第18話
「倒したのか…」
吹き飛ばされて状況を理解できていなかったライが、起き上がり聞いてくる。
「ああ、最後カバーありがとな、ライ。アックスもナイフ助かった」
「え…あ、ああ…」
「ふ…お前がお礼なんて珍しいな」
ライとアックスが俺の感謝に驚く。
(そうなのだろうか…?よくわからない)
「流石ね…」
「すげーな、ユザナ!こりゃ、8人切り出来るわけだ!なぁ、カイ?」
「…あ、ああ…そうだな…」
ランとライが賞賛してくれる。カイはどこか戸惑っているようだ。
「結構物音たてちまったし、早く戦利品集めて逃げようぜ」
その提案に全員が賛成し、物色を始める。
人攫いたちは、物資を1カ所に集めていたので、回収は簡単だった。1日以上ボスが戻らなかったのだ、逃亡しようと集めていたのだろう。マジックポーチに詰めるだけの作業だった。入りきらない物資を手に持ち、裏口から脱出して馬車まで戻る。
「帰ってきた!」「大量!」
「無事だったみたいだね」
留守番組が出迎えてくれる。戦利品を置いて休憩することになった。魔力に余裕があり、血の汚れもあるため、シャワーも浴びる。
(仕事終わりのシャワーは至高だ。このためだけに頑張った。嘘だ…)
シャワーから戻ると、皆で奪った戦利品を鑑賞していた。
「すげー」
「この戦利品全部売ったら何年か暮らせるぞ!もちろん正規の値段でだけどな!」
「金もだいぶ手に入ったね」
「奴らだいぶため込んでたな」
並べた戦利品に対し各々感想を述べる。
「よし、ユザナも戻ってきたし、戦利品を分けるか」
「おう」
「この剣ほしい!」
「そうだな」
「ちょっと待って!……分ける前にこれからの予定を教えてよ、カイ…このキャンプは離れるの?」
カイが分け前を決めようとするが、ランが割って入る。昨日俺がカイに話した話と入りが似ているため、カイがこちらを向く。一緒に冒険者になろうという、あの話はカイ以外にしていない。首を振って対応する。
「まだ、悩んでる…」
カイが曖昧な返事をする。
「実は、コージがあと半年で15になるの」
「お、おい!」
「いいから、話させて!」
ランが暴露するのを、コージが止めるが、ランはそのまま続ける。
「半年後、コージが冒険者になったら、私とライ、アックスで手伝ってお金を稼ごうって考えてるの…稼げるかは分からないけど、スカベンジャーより安全だわ」
「そうなのか…」
カイが戸惑いながら返す。誰か1人でも冒険者になったら依頼を受けられ、稼げるようになる。
「次また捕まった時に、助かる保証はないでしょ?今回集まったお金で、ダンジョン近くの町まで移動して半年待ちましょうよ、ここよりは大分安全だし、あなたたちも将来は傭兵じゃなくて冒険者でしょ?」
傭兵の職場は戦場、冒険者の職場はダンジョンだ。冒険者になるならダンジョン近くに拠点を移さなければならない。魅力的な提案だが、カイはうつむいている。
(原因は俺だろう…なら、答えるのは俺か…)
「残念だが、俺は無理だ。ノービアに予定ができた。そっちに向かわなきゃならない」
「ノービア…? そう…予定…その予定は時間が掛かるものなの?」
「…分からない…多分すぐだと思う」
「すぐなのね、じゃあ予定が終わったら北西にあるラゴーアのダンジョン街まで来て。そこで合流しましょ?」
いい案だ。カイはどうするのだろう。
「ラン、話を進めすぎだよ。みんな戸惑ってる…」
「う…ご、ごめん」
「しょうがないなぁ……」
コージが苦言を呈し、ランが謝る。
「で、でも行動するなら今でしょ?お金もあるし…キャンプにはもう戻っちゃいけない気がする」
「そうなの?」
「うん、なんか嫌な予感がする」
「ランの感はあたるからなぁ…」
ランがキャンプが危険だといい、ライとアックスが頷いている。実際スカベンジャーの感はよく当たる。俺もキャンプに戻るのは危険な気がする。カイはまだ悩んでいる。もう頃合いだろう、悩むのは御終いだ。
「分かった。予定が終わったらラゴーアに向かうよ。カイもそっちで待っててくれ」
「え…」
カイが驚きこちらを向く。
「ちょっと疲れた。気分転換に散歩してくる」
(なんか、胸が苦しい…)
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