第18話・色んな感情が絡み合う

2人をいっぺんに亡くしてしまった怒りと、その気持ちをどう処理して良いか分からない感情のまま、真紀の恋人でもあった‥職種・ホストno.1の糸崎修に抱かれていた。


修との出会いは、修が仕事を終え家に帰宅している最中に、地面にしゃがみ込み野良ネコを抱きしめながら、そのネコに話しかけていた真紀だった、

そんな彼女を見かけて声をかけた時に修が見た時の真紀の笑顔に落とされた。

修の人生において一目惚れをしたのは真紀が生まれて初めての出来事だった。

真紀には旦那と子供2人?もいる事を知りながらも真紀の家には迷惑かけないという条件で交際が始まった。真紀の旦那にも恋人が居た事も真紀から聞いていたし、いつもの口癖「何であの人だけ幸せに成らないといけないの?可笑しくない?私だって幸せに成りたい!」と聞かされていた。


修の生活には、もう真紀の存在は絶対だった為 真紀の望んでいる事は全て叶えてあげたかった、それが例え自分の人生を失う事になっても良いという覚悟も、していた程 今の修には 真紀しかいなかった。


例え、真紀の気持ちが自分に無くても…と思っていたのは修だけだった。


真紀にとって修の存在は絶対で必要不可欠な存在だったが、そんな反面 コマでもあった。


その頃の由樹は、相変わらずマンションに仮住まいをしていた。

絆さんが由樹に『無理してココから出で行かなくても良いわよ、見ての通り部屋も余ってる訳だから…由樹くんが嫌じゃなかったら、何だけど…って言うかその方が私も助かるんだけど、出張も多いからほぼ私 家を空けるから…』と言われて、雫と子供を失った痛手もまだ癒えて無かったのもあって、その言葉に甘えてしまっていたのだ。


由樹に自分が実母だと教え、今の関係を壊すより言わないまま他人のフリをし続けて、私が自分の墓場まで持って行く方がマシと思った時、昔に感じた事のある出来事を思い出していた。

何処かで”誰か”が私の事を思って探し求めていた、でも私はその人には会わせて貰えずにいた、『会いたい』と父にお願いしても頑なに首を縦に振らなかった。

そんな何処か懐かしさもある感情がどこか、もどかしい想いに似た感じもしていた。


最近、毎日の様に同じ夢を見るように成っていた、いつも同じ場面で目が覚めてしまうのだ、(今日こそは、あの先を…)と願いながら眠りに着いても、願いは叶わないでいた。それでまた目覚めた時いつも涙が流れた跡が頬に付いている。

それでいて、もどかしい気持ちのまま目が覚めてしまう為、仕事に向かう際のモチベ-ションを上げて行くのは大変である。

由樹に再会したあの日、あの雨の日、由樹の顔を見て気付いた瞬間、何故か、何処からか”誰か”の声が”その子よ”と聞こえた様な気がしていた。


今朝、由樹はなんでこんなにも胸騒ぎがするのか?と思いながら、仕事に行く支度をしていた。

ふと、新聞に目を落とした時”え?”と衝撃が走った。

瞳が、以前問題を起こした時の犠牲者、貴美香の両親が一人娘の仇を取る為に瞳を狙ったが、その時 瞳と一緒に居た父親が瞳を守るように助けた、その代わりに刺殺。その状況を、把握出来なかった瞳までもが背後から来た貴美香の母親に刺殺された、と由樹は新聞で初めて知った。

(一人娘を奪われて苛立つ気持ちを持って行く場所が無いとしても、犯罪者に成ってしまったら意味無いじゃないかぁ〜)と落胆した。


由樹は、複雑な思いで押し潰されそうだった。

その悔しい気持ちに似た感情が由樹の中で育っていた…いつ爆発しても可笑しくない程に成っていた。

父親も、自慢の妹も、もう居ない…母親は精神病院に入ったまま、もう出る事は無いだろう…。

世界一生まれて初めてこんなにも、人を恋しいと思った事が無いぐらい愛した雫と我が子を失った、俺には、もう誰も居ない、守るものは無い。と強く何かを決意していた…

そんな由樹を見た時、(何かを決めたのね)と感じて私は、彼に何が出来る?と自問自答をしていた。


由樹は今日の仕事も終わり帰宅していた途中で、聞き覚えのある声とまだ鮮明に覚えている雫の出来事について笑いを混ぜて話しているヤカラとすれ違おうとしていた時、由樹はその男の顔を見てしまった。

一瞬にして眠っていた怒りが爆発した、自分で自分を止める事が出来ぬまま、由樹はその青年に声を掛けた「あの~すみません。さっきから話されていた女の人ってもしかして、毎週旦那さんと週末にスーパーに買い物に来ていた人の事ですか?」と淡々と話をしていた…聞かされた青年は、(何?この人?気持ち悪りぃ〜)と思いながら『誰ですか?あなたは?…』と言った直ぐに『もしかして…』と青年が発言したと同時に由樹は青年にナイフを向けた、「悪人が何で生きてるんだよ…」と言う由樹の言葉に薄っすら笑みを浮かべながら『俺、ちゃんと更生したんで、罪は継ぐなった事に成りません?』と簡単に発言したことに対して(こんな奴なんかに雫は殺されたのか)そう思ったら一瞬にして顔の層が変わり、もうそこには本来の由樹の姿は無かった。


青年に向けたナイフに自分の思い全てを込めた。


・青年(22歳)…刺殺。




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