第10話・ウソ・真実と裏表

‥‥

黒枝由樹(15歳)、父・考志と父の愛人・斉藤絆との間に出来た子供、事情があり妻である真紀との間に産まれた子供という事にして育てられる、そんな事を知らない周囲の人間達は自然と受け入れる事になる。

真紀が、由樹を見るなり面影が考志に似ていた為、由樹に対しての態度が一瞬にして激愛に変わった、もうそこに考志へ対しての想いは無く成っていた。


考志の両親は初孫だと思わされ、とても心から喜んだ。

由樹にとっても”本心”からの愛の元で育てられ幸せだった。

それから二年後に、黒枝家 実の初孫、瞳(ひとみ)が産まれ由樹もお兄ちゃんに成り、妹が可愛すぎて兄”だけ”が激愛するようになった。


由樹は、とても物静かであまり人と接触する事が苦手な少年だった。が、唯一、由樹が7歳の時に出来た真の友3人、牧野勇作・佐藤寛・岩田亮介と良くつるんでいた。

父親は、とても紳士ぽくカッコ良かった、その血を受け継いでいる由樹も父親に負けないぐらい、学校一のイケメンで有名であった。

由樹が通う高校の文化祭が行われる日には、早朝にも関わらず由樹目当てで四方八方から、女子達が集まって来る程だった。

同性にも好かれて居て、いろんな面で敵も多かった…。

物静かな性格であるが、スポーツなど何をやらせても全て完璧にこなす、という熱い漢とのギャップが女子の心を、掴んでいたのかも知れない。

言うまでもないが、頭も良くいつも学校一トップクラスで身長も185cmと高身長、脚も長くスタイルも良かった事もあり学校の許可をもらって特別にモデルの仕事もしていた。

学校の宣伝になるからという考えで、許可を出していたそんな理由でokが、出でいる事など全て由樹は把握していたが、あまりゴタゴタに巻きこまれたく無かった為、反論はしなかった。母親は、そんなカッコいい優しい息子の事が自慢であり、異常な愛し方には抵抗があったが、嫌いでは無かった。


父親の由樹への育て方に対しても窮屈で息が出来なくなる程の、束縛的行動に嫌気がしていて父親の事は大嫌いだったが…仕事人間としては尊敬していたし、誇りにも思っていた。妹の瞳もこんな自慢出来る兄の事は特別な感情で接していて、母親に対する敵対心そのままだった。


ある日の夕方西日が強く光り輝いている時刻に、いつもつるんでいる仲間と小学生の時に見つけた溜まり場、いわゆる秘密基地みたいな倉庫でたむろっていた。

その日の由樹は何故か一段と暗かった、その様子に気づいた勇作が『どうした?いつも以上に暗いじゃん‼』・・・少し間が開いて由樹は口を開いた。

「俺、あの両親の子じゃないらしい」続けて「父親の愛人の子らしい」そう言ってそこら辺に転がっていた石ころを強めに投げ、その石が当たった金属の音だけが倉庫中に響いていた。

寛が口を開いた『その事いつ知った?その事どこで耳にしたの?』沈黙が少し長めに流れたからようやく由樹が口を開き、「ココに来る前 自分の部屋から一階に降りた時 珍しく両親の口喧嘩が聞こえてきて、いつもならスルーするんだけど、なんか気になったから…リビングに近づいて行ったら中から二人の声が聞こえてきて、何故か体が金縛りにでもあったかのように動かなくなってた時に、ハッキリとした口調で母親が父親に向かって『貴方の恋人?に久しぶりに出会ったわ、私に会いたかったらしくて、”突然で申し訳ないけど、由樹を返して欲しいの。仕事で海外に異動になって、私一人きりで海外行くの寂しくて、誰か⁈って思った瞬間に思い出したのよ、あの契約は無期限だったはず・・・そういう約束だったはずよね”って言ってきたのよ!それは本当だけど、理由が気に入らないわ!由樹は寂しさの道具にされたのよ!!私にも翔くんが居るから貴方との事をどうこう言おうとは思わないけど、あの言い方?それに腹が立ったのよ!この15年間、ほぼ私が育てて来た訳じゃない?貴方は、ほとんど会社か、あの人の所に居た訳だから・・・違う?私は、由樹を渡さないからね‼』って・・・あの両親狂ってるよ!」と言いながら頭を抱え込んだ。「俺には信頼できる家族は居ないって事だよな、嫌いな両親だけどさぁ信じてたから、親だって思っていたし、あんなにもデカい会社のトップに居る父親の事も、スゲーって俺にとって誇りの一つでもあったからさぁ…悔しいよ....」そう言いながら、由樹には珍しく涙を流している姿を見て、仲間三人は何も口にせず、由樹の背中・肩…をさすっていた。


涙を流しながら由樹の心の奥底からフツフツと全身が熱くなる何かを感じていた。


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