第9話・もう一つの物語が開かれようとしていた
‥‥
野田真紀(16歳)が、今まで北村新一郎に何をされていた事や、これから忍が何をしようとしているか、全てを考志の両親に打ち明けていた。この先、真紀の事もお願いしていた。無理を承知で忍は黒枝優一郎と友里に頭を下げた。真紀を助けるために優一郎と友里は了承してくれた。
頼んだ事は、真紀には内緒という事まで、理解の上引き受けてくれたのだ。
忍は、只々感謝しかなかった。
真紀は、黒枝家に引き取られ考志の妹として籍に入った。
それからは、何事も無く真紀にとっては生まれて初めて、”愛”と言うモノに触れた思いでいた、忍さんとの事は悩んだが自分の中に閉じ込めて鍵をかけた。
色んな面で、いつも考志が傍に居てくれる幸せに溺れ始めていた。
もう、手放したくない想いで塗り固められていた。
ケアしながらの日々を過ごしていた事もあり、皆が大学へ進学して行くのを横目で見ながら『真紀は今のままで大丈夫』と、大好きな人の言葉だけで生きて来れた。
でも、彼の陰に、”不必要なモノ”を感じた時は”消そう”とも思ったが…彼の哀しい顔は見たくない想いだけで諦めた。(私も、少しは大人になったかしら?)と”誰か”に話しかけるように、呟いていた。
私に、ご褒美をクレタの?と思わせる出来事があった。
‥‥
何時しか真紀は、毎晩毎晩、寝ている最中に誰かを透視するようになっていた。
透視しながら、強い霊感まで操れるように成っていた、「良いモノ、見~つけた!」と呟き目が覚めた。
考志が、彼女と別れたと報告もかねて、実家に帰って来た時、久しぶりに真紀からのリクエストで隣で一緒に眠りについた。
寝言だと思っていた考志は、『良い夢でも見たの?』と聞くと、「え?何の事?」と、とぼけてみせた。(今では無い、でも近いうちに教えてあげるわ)と、頭の中で呟くと”クスッ”と”誰か”が笑った。
「もういいかい…まぁまぁだよ・・・・もういいかい…」の問いに”もういいよ”と呟かれて、真紀は、ニヤリとした。
‥‥
ある日、真紀は考志に「会いたい」と言い、「大丈夫?」と言い慰めた。
絆との傷が癒えて無い考志には芯の芯まで沁みてゆき、自然の流れと思っていたのは考志だけで男女の関係に成った。
今の考志は、真紀が全てだと思うようになってしまった。
”今夜かな?”と頭の中に浮かべたまま、考志に告げた。
「誰か親切な方が、教えてくれたのだけど…でも考志あんなに傷つけられたし、でも、この事知ったらその人の元へ行く気がして、私と居るよりその方が幸せなら…だって大好きな人が幸せなのが一番、私にとっても幸せだから…」と泣き崩れながら言ってくれた真紀を抱きしめながら、『俺は何処にも行かないよ、だって、約束したじぁないか…あの日あの時‥‥叶わなかったけど.....』と全身を怒りで震わせながら泣いていた。
そんな姿を見て心の中で漫勉無い笑顔に包まれていた、それと同時に”誰か”の温かさも感じ取っていた。
正直に、斉藤絆が今どう言う状態で、どうしているか、今どこにいて、どうしたいと思っているかを伝えた。
さすがに、ちょっと驚いてはいたが、間もなく『そうなのかぁ~苦しい想いをさせたね、俺の事を考えてしんどかったね…大丈夫、俺は何処にも行かないよ‥‥彼女は全てを知ったうえであの時俺の前から姿を消した。それが事実だよ』と言い私にキスをして、『俺には、もう人生を共にしたいと本気で思っている人が今、俺の目の前に居る‥‥それで良い。』その言葉に続くように『その人にまで振られたら、この先は孤独に一人で生きて行くよ…』と意地悪げな顔を見せてニコッとした。
意外な言葉に、本気で驚き”え”と真紀の声には、”反応”が無く…”考志の本当の気持ち?”に真紀は号泣した。
何処から何処までが自分と”あの人”の操りなのか分からなくなっていた。
二人の間には血縁関係が無いため、真紀にとってこのプロポーズは
世界一最高な日になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます