「巨人たちの無調ジャズとその他の音楽についての物語」

@peggyorange4

第1話 「ミンガスなら来ないぞ?」(1)

「なんだこりゃ?」「いや。最高じゃないですか!」

若手の記者は自分の書いた(手書き)原稿用紙を胸に張る。「いや。前例はないが・・・・・・・・・」「絶対、インパクトありますよ!」


チャーリー・パーカーのライブのレポートであるのだが「語り得ぬものには沈黙しなければいけない。」という文字列「だけ」でスペース一杯が埋まっている。


「そりゃあインパクトあるだろ・・・・・・。説明になってない。」「いいんですよ、迫力を伝えるんだから!こういうのは早いもん勝ちですよ。」「これじゃポエムだ・・・・・。」


リー・コニッツはいつものように目深に帽子を被り、マスクも付け、入口の受付では「アンソニー・ブラッドソン」と書いた。知り合いの名前を捩った偽名でジャズのライブを見に行く時はいつもそうしている。「あんた、ジャズやってるかい?」相席の観客が尋ねる。「いえ。見るだけですね。まあ、割と詳しいですけど。」サンドウィッチを頼む。「今日はな。やばいぞ。」「どうかしたんですか?」「ミンガスが出る。」「ミンガスさんが?」実は知っていた。コニッツの今日の目当てはチャールズ・ミンガスだ。万が一バレないために嘘をつく事にした。「そりゃすごいや。」「ただ出るんじゃない。」「へえ?」「パーカーのサイドに白人のサックスがつく。」


マイルスがいつものようにトランペットの様子を見るフリで観客を確認する。ちょっと違和感があるがいつも通りといえばいつも通りだろう。バド・パウエルがフライドポテトを食べ終わってパーカーと話す。「バドのイントロで。5拍子でいこう」。ミチェル・ブレーキーが驚いている。「す、すいませんパーカーさん。今日はベースは?」「ミンガスなら来ないぞ?」



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