要するに
「神は細部に宿る」
と、いうことです
舞台の大部分は香港です
東日本大震災の数カ月後――主人公の少女が訪れた現代の香港と、
少女の祖母によって語られる数十年前の香港
おおよそ、この二つのパートで構成された物語です
吟味された言葉でもって、時代や、町、人間がていねいに描かれます
味に匂い、手触りまでもが自然とこちらに伝わってきて、異国であることの「壁」を感じさせません
すうっと物語に入り込んでしまいます
まるで、衣装や、セット、小道具に至るまで作り込まれた1本の映画を見ているかのよう
そこで謳われるのは、「人間のいとしさ」であり、「人生の味わい深さ」です
と、カタイ言い方はこの辺にして
わたくしの推しポイントを端的に申し上げます
↓↓↓
主人公の桜ちゃんは素直でかわいい!
おばあちゃんは、チャーミング!
さらに、おばあちゃんのママ(とそのまわりの人々)はオモシロイ!!
お料理、おいしそう!
お金の使い方、かっこいい!
香港、行ってみたーい!!
どちらも、本音です
さてさて
みなさまは、どのような感想をお持ちになられるでしょうか?
ご一読くださいませ
『金蘭大夜総会 ~Golden Orchid Club~』 応援レビュー
──この物語は、風化してはいけない“記憶”を、確かな手触りで留めてくれる──
レビュアー:ひまえび
ましら佳さんの筆によるこの連作短編は、戦後の香港という時代と場所を背景に、忘れ去られそうな人々の「生きた証」を優しく、しかし凛とした眼差しで描いています。
喧騒の中にひそむ静けさ。
煌びやかさの裏にある悲しみと誇り。
すべてが過剰になっていく時代のなかで、あえて「語られざるもの」を丁寧に掬いあげようとする、その姿勢に、私は深く心を打たれました。
本作を読みながら、私は同じくましらさんの別作品『仔猫のスープ』を思い出しました。
こちらもまた、都市の片隅でひっそりと生きる人々を見つめる視線に満ちた物語であり、両作はテーマ・文体・感情の余韻において、見えない糸でつながっていると感じます。
いずれも大仰な仕掛けや派手な展開に頼ることなく、人間の尊厳や哀しみ、そして小さな希望を静かに描いています。
それは決して目立たないかもしれませんが、読む者の心に深く残る“灯”のような作品です。
このような優れた文学的作品が、まだ十分に読まれていないのは、正直とてももったいないと感じます。
読後、思わず静かに本を閉じ、遠くを見つめたくなるような──そんな体験を、ぜひ多くの読者の方にも味わってほしいと願います。
ましら佳さんの物語が、多くの方に届きますように。