番外 日報 正義と悪とちょっとずれた日常編
横側 すづき
第1話 絡んで搦めてドーナツ
※本作は、『日報:世界征服』の番外編になります。
本編は、こちらからどうぞhttps://kakuyomu.jp/users/yokogawa03
女帝の気まぐれは、いつだって全力。
スパゲッティ・ドーナツ。
その名前を聞いても、それが料理なのかスイーツなのか、いまいち分からなかった。
ジョカ様曰く。
「私の推しの俳優がね。SNSで食べてたんだよ。気になるじゃないか。推しが食べてたんだよ?」
──そう。
それを作れとの圧だった。
山田は、困惑した表情で写真をまじまじと見ている。
「これは、料理と言っていいのでしょうか?」
イタリア系が見たら卒倒しそうだ。
「うわぁーーめちゃ斬新ww 飯なの?!? スイーツなの?!?!」
ノースは大袈裟にはしゃいで写真を見ている。
「山田ならできるだろう?」
ジョカ様がそう言ってる気がして山田は、一礼し部屋を出る。
カフェテリアのキッチンの一角。
山田はジャケットを脱ぎシャツをまくって専用のエプロンをつける。
ふだんからなにかと料理することがあるので専用のものを用意したのだ。
「えー裸エプロンしろよー」
ノースが茶化すが山田は、黙々とパスタを茹でる。
「とりあえずミートソーススパゲッティを先ず作って……」
「いただきマース!」
「まだ待てです!!」
被りつこうとするノースを慌てて止める。これはまだ過程なのだ。
「ちぇー十分美味そうじゃん。」
「そういう問題ではなくてですね。あの形にもこだわりがあるんですよ。」
ノースはカウンターテーブルでだらりとしていた。
「あっ! 山田ちょっと後ろ向いてみ?」
目の前で器用にドーナツ型にスパゲッティを詰め込む山田を、ノースがニヤニヤと見て声をかけた。
「?」
「いーからちょっと後ろ! 向いてみって!」
渋々山田は体をひねりノースに尻を向ける形になる。
エプロン隙間から鍛えられた、普段はジャケットに隠れている臀部が見える。
「うおっ……ケツがエロい!!」
突然の叫び声に、山田の手が止まる。
「お前、ケツまで鍛えてんのかよ!? エプロンの隙間から見えてんの、ヤバいって!!」
「……お前、今すぐ出ていけ」
「いやいやいや違うって! 褒めてんの! てか……」
ノースはニヤニヤ顔で笑いながら、テーブルに突っ伏すようにして言った。
「ごめんってww だってお前それ狙ってるだろwww」
「黙れ」
山田が懸命に試行錯誤している間中、ノースはただだらけてカウンターテーブルにしなだれていた。
時折、頭だけ起こしては──
「もっと腰入れて押せー」だの
「お前ならもっといけるだろー」だの、
妙な応援とも煽りともつかない言葉を投げてくる。
山田は無言でフライ返しを投げた。
なんとか押し込めたスパゲッティをオーブンに入れたが──
果たして、これで本当に“ドーナツ”になるのだろうか?
もはや料理としての理屈ではない。
推しが食べたというただそれだけの理由で始まった試みだが、
山田の理性は今、静かに首をかしげていた。
焼きあがったスパゲッティ・ドーナツ。
香ばしい匂いと共に並べられたそれを、ジョカ様は優雅に一口。
「ふふっ。いいじゃない。かわいいし、美味しいし、合格」
ノース「やったなミゲル!」
山田「……気まぐれにもほどがあります」
番外 日報 正義と悪とちょっとずれた日常編 横側 すづき @yokogawa03
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。番外 日報 正義と悪とちょっとずれた日常編の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます