第37話 終章

     37 終章


 で――その先は本当にただのラブコメだった。


 美礼を背負った俺は、文香達と共に帰路につく。

 その最中、文香は真顔で言い切る。


「うん。

 私が許可する。

 龍君は、しだれちゃんのオッパイを揉んでいいよ。

 龍君は、それ位の仕事はしたからね」


「………」


 余りに暴言すぎて、俺としだれは言葉を失う。

 この女は本当に一体何を考えているのだろうと、首を傾げるばかりだ。


 しだれも同じ思いなのか、彼女は両腕で自分の胸を隠して、頬を赤らめる。


「……アホか。

 余りに、話にならない。

 もう議論する気さえ起きんわ。

 文香は、一度病院で頭の検査を受けた方が良いんじゃない?」


「んん? 

 そうかな? 

 そんな事言って良いの、しだれちゃんは? 

 しだれちゃんって、本当は美礼ちゃんに遠慮しているだけでしょう? 

 美礼ちゃんに気を遣って、龍君に対する本当の気持ちを――」


「――あーっ! 

 あーっ! 

 もう黙れ――この女はっ! 

 それ以上言うと、私は本当に文香を敵と見なすぞっ!」


「………」


 しだれの気配から察するに、彼女は本気だ。

 今日もしだれは文香に翻弄され、ついでに俺も文香に振り回される。


 その事に苦笑しながら、俺は文香の戯言にのってみた。


「そうだな。

 実は俺も一度――しだれの胸を揉んでみたかったんだ」


「――アホっ? 

 第二のアホが出現したっ? 

 って、本当にその手の動きは気持ち悪いんだよっ! 

 お前まで文香に感化されたら、私はどうすればいいんだっ? 

 もう私だけじゃツッコミが追いつかなくて、毬子さん辺りを動員するしかないわ――っ!」


 しだれが絶叫すると、文香は普通に笑う。


「いえ、やっぱりしだれちゃんとは、正々堂々決着をつけておこうと思って。

 創世十字拳の使い手としても――恋のライバルとしても、ね」


「………」


 どうでもいいけど、本当にマイペースだな、此奴。

 そんな文香を見て、しだれは呆れ、俺は思わず苦笑する。


 此奴は本当に――笹崎文香なのだと心底から思い知った。


 そのとびっきりの奇跡を前にして、俺は頬を掻いてみたりする。


「へえ? 

 と言う事はこのままだと文香ルートからしだれルートに変わる可能性もある訳だ。

 だとしたら――本当にこれは只のラブコメだ」


 もう何度も言い続けている事を、俺は今も繰り返す。


 しだれは尚も顔をしかめ、文香は堂々と胸を張った。


「そうだよ。

 私の転生も、龍君の創世十字拳も、ただの舞台設定。

 私達の物語の本筋は、只のラブコメ。

 だからさ――これからも私達とラブラブしようよ、龍君」


 それが結論だとばかりに、彼女は微笑む。

 

 俺は、グウの音も出ない。


 笹崎文香が言う通り――こうして焔龍のラブコメは尚も続いていく―――。


                      極めて普通のラブコメ・了

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極めて普通のラブコメ マカロニサラダ @78makaroni

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