トロッコ問題の後。
恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界
トロッコ問題の後
とっさの想いでレバーを引く。間もなく勢いをつけたトロッコが一人を轢き殺す。
即死だった。
自分に流れるナニカが失われていく、ひび割れた水瓶から水が流れ出ていくように。
そして喪失感と無力感が身体を支配し、呼吸をすることさえ出来なくなる。
あのときした選択は間違いじゃないと、周りは自分を慰謝してくれる。
遺族からも「しょうがない事だ」と言われたとき、心が人のカタチを失った気がした。
トラウマが生活を脅かしてくるから、動物らしい生き方から外れてしまい植物のような生き方しか選べなくなった。
それでも、社会は自分を生かせてくる。
死ぬ気力はわかず、自ら動くこともできず、生きる理由も見当たらないにも関わらず。
さて、ここまでで過去一年間の薄い記憶を思い出してみたがどうだっただろうか。
気づくと自分は真人間に戻ってきていた。診てくれる人が根気強く話しかけてくれたおかげだろう。
今は徐々に会話をすることが増え、体も意思を持って動かせるようになっている。日常に復帰するときも近いとのことだ。
なんとなく心が整理をついたのだろう、この心を名状することも形容することもできないが。
それでも、忘れることなど到底できないトロッコ問題。
問題の先を、未来を考えなくてはならない。
トロッコ問題の後。 恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界 @Nyutaro
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