第9話 挑戦者
カインは前かがみに座っていた。手には鳴り響く鎖。彼はそれを指で回しながら、まるでそれが鎖ではなく、運命のロープであるかのように扱っていた。
彼の目には恐怖も安らぎもなかった。ただ、疲れ切った無限の認識があった。
鎖…一生、鎖。
三年の鉱山生活:石、血、飢え。
首の焼印――16 19 14。奴隷番号。
焼いても戻ってくる。切っても残る。
消せない印。
彼は思い出した。砂漠でもフードをかぶって歩いていたこと。自分の番号を隠して、まるで自分から逃げられるかのように。
今――隠すものは何もない。
コーニとはほとんど話さなかった。
ただ、座っていた。
それぞれが、自分の静けさの中で。
しかし、彼女は尋ねた。
「カイン…この街に来たのは、思い出すため?」
彼はすぐには答えなかった。床を見つめていた。
その瞬間、震えた。
鈍い轟音。
天井から砂埃が落ちてきた。
コーニは壁に体を押しつけた。
「地震…?」彼女は息を呑んだ。
爆発。
天井が崩れた。光が牢屋に流れ込み、石が降り注いだ。
そして、彼が現れた。
入ってきたのではない。
世界に衝突した、まるでハンマーでコンクリートを突き破るかのように。
高い。巨大な。
体はまるで岩から彫り出されたようで、赤い布が第二の皮のように胸を覆っている。
腕は異常に長く、膝近くまで届いている。
目は暗い青で、燃えるように輝いていた。目標を探しているわけではない。戦いを求めていた。
白いホアリのマントは背中で風に揺れており、まるで空気すら彼に触れるのを恐れているかのようだった。
彼は自己紹介しなかった。そして、コーニには一度も目を向けなかった。
彼はカインを見つめていた。
「お前か… 挑戦者か?」その声は雷鳴のように響いた。
カインは動かなかった。
彼らの視線が交差し、その瞬間、すでに戦いが始まっていた。
一撃。
振りかぶりは見えなかった。ただ、閃光とともに――拳が、まるで衝撃波のようにカインに向かって突進してきた。
カインは腕を交差させ、ブロックを試みた。だが、それでも壁に押し飛ばされてしまった。
バキッ。
カインは倒れなかった。
彼は立ち、息をしていた。
肩からは砂が落ちてきた。
獣のような男は鼻で笑った。
「適応しているな。」
彼は再び突進した。
足の鎖が邪魔をした。カインは回避しようとしたが、間に合わなかった。彼は列車にでも轢かれるかのように押しつぶされた。
ガキッ。
一緒に壁が崩れ、隣の牢屋に突き破った。
そこには他の囚人たちがいた。半死に近い者たち。
獣のような男はカインの上に立っていた。
彼の手はカインの頭上にぶら下がっていたが、白い髪には触れなかった。
カインはその手首を掴んだ。たった二本の指で。
もう一方の手が振り上げられた――
カインは引き寄せられたが、足枷がそれを許さなかった。
一撃。
そして再び、空中へ。
彼らはまた別の壁を飛び越え、もう一つの壁を超えた。
ついに外に飛び出した。
カインは砂だらけの地面に倒れた。
眩しい太陽が彼の目を焼いた――彼は四日間、昼の光を見ていなかった。
獣のような男は振り上げた腕を使って、最後の一撃を放とうとした。
そしてその瞬間――
手。
細く、黒く、無音。
白い仮面の暗い影が現れた、まるで空気から生えたかのように。
その拳を何の力もなく止めた。
「オムブレ。」獣はうなり声を上げた。「楽しませろ。」
「彼はオシャー様に必要です。」その声は氷のようだった。
獣はその男を見つめ、まるで獲物を見ている虎のようだった。
そして突然――彼は叫び始めた。
アアアアアアアアアアアアアアア!
地面が震えた。壁が軋んだ。
窓が割れた。
カインは耳を塞いだ。
静寂。
獣のような男は腕を下ろし、息をついた。
「お前が正しい。生け捕りにするべきだ。女を取って、オシャーに連れて行け。」
オムブレは軽く頭を下げた。
「彼はまだ折れていません。」
獣は大声で笑った。
「お前、クソサディスト… こいつの目を見てみろ。」
オムブレは振り返った。
細い仮面には、表情はなかった。
彼はカインを見ていた。
カインは砂の中に倒れていた。
顔は血だらけだった。
重く息をしていた。体は傷だらけ、汚れだらけだった。
だが、その目は――
追い詰められた獣の目ではなかった。
それは歯を食いしばってでも、自分の道を切り開こうとする目だった。
獣はにやりと笑った。広く。
敬意を込めて。
「こいつのような奴は、壊れない。」
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