第9話:エヴォピンク(Ⅱ)
「へいへーい。では」
エヴォレンジャーの小型機動ポッド、操縦方法はバイク&乗馬形式。突き出るお尻が良い感じ♡
マシンに跨がったまま、ピンクは俺を手招きする。
「では、姫様。ご同伴させていただきます」
恭しくお辞儀、俺も機動ポッドに乗り込む。エヴォレンジャーがバイクと同様、目的地へ移動する為に使用する一人乗りの小型ポッド。当然、コックピット内は狭い。
「ちょっと、触らないで!」
「触ってはいませけどぉ」
体格の大きい俺が後方。ロザリーに覆いかぶさるように跨がる。無理矢理の二人乗り、全身密着してしまうのは不可抗力、うん不可抗力♡
ロザリーに覆いかぶさる俺。ロザリーのお尻に俺の股間に良い感じ。
ロザリーが操縦のためお尻を動かすだけでかなり良い感覚だ。
「何していますの!?」
「何と言われましても、ナニもしていません」
密着度が増す、ドスケベハイパーインフレーションボディーのイバラニア様とまた違う。
未成熟な愛らしさ優先の美少女。少々ツンツンしている所も意外と可愛い。スタイルも良い、良い匂い。制服の上からでもはっきりとわかる。柔らけーっ。
容姿は最高だ。でも残念、絶滅危惧種の暴力系ヒロイン。
機動ポッドは二人を乗せ空へ舞い上がる。上空を高速で移動。巡航モードになる。この状況にも少し慣れた暴力姫。早速愚痴。
「はぁ、早く、屋敷に戻ってお風呂に入って。一刻も早くこの服を処分しませんと」
「処分? 貸すだけですよ、貸すだけ、ちゃんと返却して下さい……というか普通洗ってかえしますよね。手作りクッキーとかお菓子付きで」
「クッキー? 手作り?」
「お礼の気持ちです、キ・モ・チ。ラブコメの定番ですよ。ちなみにチョト出来が悪くても食べてあげるのが紳士の嗜みですな」
エヴォピンク、ロザリーはキョトンとしている。
「わたくし、服を返すなんて一言も申し上げておりませんけど」
「ええ、さっき貸せって」
「わたくしは、「よこせ」と言ったのです」
怒りゲージが……
「この衣服、わたくしが袖を通してしまったのですよ。もうこの服はただの衣服ではありません。このわたくしの身体を包んだという至高の価値を持ってしまったのです。もう庶民が着て良いものではなくなりましたわ」
あの、後ろから首絞めていいですか?
「心配なさらないで、庶民には別の衣服を用意いたしますわ。どの様なブランドの服を着ているのかしら? 言ってみなさい」
「支給品の学生服。魔フ……ただの学生服だ、ブランドなんて無い」
危うく、魔幇と言ってしまいそうになる。
「ふーん。ノーブランド? わたくし初めてそんな服を着てしまいましたわ」
ロザリーは自身が身に纏っている俺の制服を見つめた。俺の着ていたシャツ、胸元が盛り上がっている。エロい。
「汗くさっ」
俺の汗がしみこんだシャツ。
「くさっ、くさっ……」
「さいですか」
俺は沈黙した。怒ゲージは
ロザリーは何度も俺のシャツの匂いを嗅いで、独り言を呟いた。その表情、俺からは見えなかったけど、口元は微かに緩んでいた。
島7号(アイランド7)は比較的小さな島々が連なった群島。別な島。
数分と経たないうちに、エヴォレンジャーの機動ポッドは島7号(アイランド7)の中で元も大きな島、高級住宅街付近に近付いた。
「ココで下りて頂戴」
「えぇ?」
「わたくしがエヴォレンジャーである事は、お母様とごく一部の使用人以外、誰も知らないの。絶対秘密なの、特にお姉様には。だからこのまま屋敷には入れませんわ」
屋敷近く、機動ポッドが静かに着陸。そのまま、屋敷の裏口から敷地内へ。
「お城かよ、なんてデッケー家だ。壁とか高けえぇ、城壁だわ」
「そうね、セキュリティーは万全よ」
様々なセンサー類に対人レーザー銃、物騒だな。どうやら、エヴォピンクは正真正銘のお嬢様、世間知らずで傲慢で暴力的、確かに性格的にもベタな大金持ちキャラだ。
立派な建物に、豪華な調度品、貴族というか王族というか。
「立派な家だな」
「そう? ココは数多くある別荘の一つよ」
「そうッスか」
「本宅は、わたくしでもたまに迷ってしまいますわ」
俺達は屋敷には入らず、裏庭の方へ?
「裏庭??」
「此処で待ってなさい」
「此処は?」
「見ての通り、物置小屋ですわ。ああそうなのですわね、庶民にとってはこんな物置小屋でも屋敷に見えてしまうのですわね」
まぁ~俺のアジト、ボロアパートより広いことは認めよう、内心で。
「今、この屋敷にはお母様や、お姉様が滞在していますの。使用人も大勢。庶民の、ましてオスを屋敷に迎え入れるわけにはいけません、汚染されてしまいますわ」
「……さい……ですか」
怒ゲージはとっくの昔にMAX状態だ。「天空から降ってくる女の子は、例外なく美少女」。そして降ってきた美少女って必ず最初に出逢った男に惚れるよね、ラブコメじゃ鉄板中の鉄板だよね。
メイクラブルート一直線、今頃美少女の部屋に案内されていてもおかしくないよね。
お紅茶とかおコーヒーとか、エッチなハプニングとか色々あってもいい頃だよね。ストーリーの流れ的には、ヒロインのシャワーシーンとかだよね。
俺の心の中。何かがブチリと切れた。「不要な機能」が
「すぐ戻りますから、待っていなさい」
変身できないエヴォピンク。
「何するの!」
「おい
ロザリーは抵抗する、だが力は俺の方が強い。逃げられないロザリー。
「め、命令です、離しなさい」
「やーだね」
俺は、顔を近づける。まるで少女マンガのイケメンみたいに迫る。まぁパンツ男なんだけど。何か、キャラが「変身」してしまったような感覚を覚える。
今俺は、少女マンガのイケメンキャラみたいになっていた。
「言っとくけど。この状況。俺、お嬢様の唇くらい簡単に奪えちゃうんだぜ、こう……」
眼鏡を外し、そっと顔を近づける。眼鏡を外した俺の顔を見つめ、目を見開くロザリーは絶句、少女マンガみたいな「キュン」とした表情? 真っ赤になっている。
「や、やってみなさい!」
押さえつけられたロザリーはパニック状態になりながらも俺を睨んだ。多分少女マンガの一コマのようなシチュエーション。
可愛い奴だ、強がってるクセに震えてやがる。
俺って意外とSッ気あるのだろうか?
ただの学生……のはず。なのに。完全にキャラ変してしまった。
Sキャラになったまま、俺の唇は数センチの距離まで近付く、ロザリーの抵抗が緩んだような気がした。涙目になっているロザリー、少し怖がらせすぎたか?
俺の怒りが、何か別の感情に変化していた。
「まぁ
俺はロザリーの手を離した。いきなりビンタ、こうなるだろう事は解っていた。敢えてビンタを食らう。ヨユーを秘めた不敵な笑み。
完全に俺様キャラになっていた。
「不埒者」
「へいへい、暴力系ヒロイン様」
ロザリーは顔を真っ赤にし、可愛い顔で俺を睨んだ。だが動揺は隠せない。
「い、いい! 待ってなさい、ちゃんと待ってなさいよ」
動揺を隠せないロザリー、顔は真っ赤。勢い良くドアを閉じながら走り去って行った。物置小屋に取り残された俺。
「俺、何か目覚めちゃったのか」
まぁ、超絶美少女と出会っても、戦闘員たる俺にナニかが起こるはずがねえ。まして相手は宿敵、神聖戦隊の一員じゃねーか。
物置小屋、パンツ一丁の俺は寝転んだ。
「あれこれ考えても……所詮戦闘員……唯唯命令通りに戦う、戦闘兵器……でも……」
でも、なんでこんな事に、不良品だから? 俺は……急に眠気が襲ってきた。
「眠い」
今日は一日中働いた、戦った。出逢った? 不思議な事がいっぱいあった。疲れていた。俺はいつの間にか眠っていた。
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