第31話 ハカセ(Ⅰ)

■■Evolution:06  Intermission「地下世界」■■


「レッド! 今助け……」

「あかん。まだ爆発が続いておる、危険や」


 地面に巨大な空洞が出来ていた。どのくらいの深さがあるのか? 見当がつかない程。


 エヴォピンクが救出に向かおうとするのをエヴォイエローが制した。空洞内は誘爆が続き、極めて危険な状態。救出は不可能だった。

「レッドーーーーーーーーーーーーーーッ」


 エヴォピンクは空洞に向かい叫んだ。まだ内部では爆発が散発的に続いている。

「……きぃ」


 呆然としているのは戦闘員っ子ちゃんも同じ、エヴォピンクの側でへたり込んだまま大爆発が続く空洞内を見つめ続けていた。



 ………………暗闇……



 真っ暗闇、エヴォレッドは目を覚ました。

「うぅ……うう」


 立ち上がる、戦闘服バトルスーツはボロボロ。だが猛烈な痛み以外、身体に異常は無い。あの大爆発でも生きている。奇跡だ。


 場所は? 此処はどこだ??

「ここは? 地下なのか?」


 爆発のショックで地表のプレート部分が崩落、地下エリアに落ちてしまったようだ。アイランド1の地下は全て人工物で構成されていた。

「ずいぶんと深い、一体どれくらい落ちたのだろう」


 地下エリアは何層、何十層、何百層にも積み重なり、まるで地下迷宮のような複雑な構造となっていた。断続的に爆発音は続いている、だけど爆発音自体はかなり遠い。

「ナビ機能は」


 バトルスーツのナビ機能は使用不能になっていた。正確な位置が表示されない。

「みんなは無事か? ……ん。ペンダントが」


 父の形見のペンダント。はめ込まれた神聖結晶セイクリッドクリスタルがぼんやりと輝く。次の瞬間、自分の側を何か、『影』のような物が通り過ぎる。「影」はエヴォレッドを導いているかのよう。

「待ってくれ! 僕は……」


 謎の「影」を追いエヴォレッドは地下迷宮を彷徨い始めた。


 ******


 真っ暗闇、俺は目を覚ました。

「いってぇ……」

 戦闘服はボロボロ、ヘルメットも一部損傷、ゴーグル部分にヒビが入っている。それでも五体満足、あの爆発の中で良く生き残れたなと我ながら丈夫だなと感心した。もしかしたら仲間も生きているかも知れない!

「仲間は!?」


 周囲を検索しようと探査システムを起動するが、ノイズ。ナビ機能も使えない。仲間の無事は確かめる事が出来なかった。

「ともかく、地上に戻らねーと」


 俺は地下迷宮を歩き出そうとする。

 振動。携帯ゲーム機がまた勝手に起動していた。また預言かよ。

「ん、ナビ?」


 ゲーム機は、地下迷宮の詳細な地図マップと現在位置が示されていた。

「一体何が起きているんだ」


 俺は、ゲーム機が示した目的地へ向かい歩き始めた。



 しばらく歩くと目的地、巨大な地下空間に到着した。

「スゲえな」


 巨大な地下空間。半径は数百メートル、高さはどれくらいあるのか? 見当すらつかない。巨大な地下空間はまるでゴミ山のように戦闘用メカや乗り物の残骸、生活用品。様々な物が捨てられていた。此処は一体何なんだ?

「やあやあ、良く来てくれたね」


 ゴミ山の中心部に人が座っていた。ヨレヨレのスーツ姿、上に白衣、顔を含め全身包帯巻き、椅子に手足がついたような特殊な電動車椅子に座っている。正体不明の男。


「ここは?」

「此処は処分場、この世界で不必要になった物を再利用リサイクルする為、全てのアイランドから収集された、ゴミ山」


 正体不明の男は特殊な電動車椅子を使い瓦礫の山を飛び下りてくる、車輪の部分が脚状になっている車椅子。段差や障害物を物ともせず、ゴミ山を飛び越え俺に近づいて来た。


「レベルアップご苦労様」

「レベルアップ? どういう事だ」

「携帯ゲーム機。俺が渡しておいたろう?」


 こいつは「キイ」と言う事しか出来ない俺達と意思疎通が出来る。魔幇?

「これか」


 俺はゲーム機を取り出した。次の瞬間。

「どもども」


 俺のすぐ後方に車椅子に乗ったままの包帯巻き男。手には俺が持っていたはずの携帯ゲーム機が握られていた。まるで魔法、こいつは特殊能力者なのか?

「……貴様は誰だ?」


 俺は正体不明の男を睨んだ。

「そうだなぁ、俺の事は『ハカセ』とでも呼んでくれないかな」

「……ハカセ?」


 包帯グルグル巻き、車椅子の男は自らを『ハカセ』と名乗った。



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