第23話 太平洋で4
Aさんは言葉もわからないなりに
ブラジル生活にも慣れてきた。
ある日、拿捕仲間が繁華街で
現地の不良にカツアゲの被害にあった。
怪我もなく無事だったが支給されたお金は
盗られてしまった。
Aさんは顔見知りの外国人ができて友人の
ようになった、だが、どこまで信じて良いか
わからなかった。
彼は俺について来いとAさんを誘った。
そこは、どこかの倉庫で
中央の広いところに男たちが集まっていた。
金をかけて戦うストリートファイト場だった。
日系二世の人がいてAさんに話しかけてきた。
「日本人ですか?」
「はい・・・」
「私は日系二世です、よろしく」
「はあ・・・それが・・・」
「あぁ、拿捕された方ですか・・・
あなた方、有名人ですよニュースになりましたからね、
ところで賭けるんですか?
まさか戦うつもりじゃないでしょうね?」
そんなつもりは無いAさん。
うっかり彼に自分はボクシング経験者だと
告げてしまった。
「あなた、それなら出てみてください。
強そうじゃないから、もし勝ったら
大儲けできますよ」
若かったAさん、思い出にと参加したらしい。
しかも、勝ってしまった。
お腹にパンチが入ると相手は苦しそうに
しゃがんで立てなかった。
いくらあるのか知らないがものスゴイ札束を
もらった。
しかし、Aさんは
「使い道ないから」と二世の人と顔見知りたちに
配ってしまったという。
みんな驚いてバカ騒ぎの夜になったらしい。
ちなみに
Aさんは体内酵素がないらしく
アルコールアレルギーで酒は全く飲まない。
もったいない・・・昔の話だけど
ある日、Aさんは暇つぶしにカジノに行ってみた。
「ポーカーとかわかんないし、スロットマシーン
やってたんだよ・・・そしたら絵柄が揃って
ウーってサイレンなってさ機械からドバドバ、
コインあふれ出てきて、バケツで三つも運んでもらったんだ。
中には関係ない奴がコイン拾うの手伝うフリして
ポケットにガンガン入れて盗んで逃げてったよ」
その帰り道、見知らぬ外国人三人に囲まれた。
金をよこせと言う。
Aさんは走った、走って逃げた。
強盗は追いかけてきた。
街角の交番に駆け込んで
「ヘルプミー、ヘルプ、ヘルプ!」
といったが、なんと警官はAさんを追い出し
ドアを閉め鍵をかけて窓から見ているだけだった。
Aさんは愕然とした。
『なんだよ、警察の意味ないじゃん・・・』
強盗は下手するとナイフや拳銃を持っている可能性があった。
「しょうがねぇから金、全部渡したよ」
結局ブラジル滞在は一ヶ月と数日。
みんなは飛行機で日本に帰国した。
会社は大層な罰金を支払い、船もまるごと没収されたそうだ。
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