第1章

(1)スナイパーの任務

 わたしが狙撃手スナイパーになると心にちかって以来、はじめて翔太アンタに会うことになった。アンタからわたしを誘ってくれたことには驚いた。さては意外とキャバクラで遊んでるなとか、飲み屋でトークスキルをみがいてきたなとか、どうにもこうにもアンタのことが気になってしかたがないわたし。まずふたりで待ち合わせして、食事をしてから店に出勤するいわゆる「同伴」の約束をした。


 わたしを場内指名してくれた「はじめての男」がアンタなら、わたしを同伴に連れ出してくれた「はじめての男」もアンタ。これはもう、絶対に運命的な出会いだ、と気分が高ぶる。「疑似恋愛ぎじれんあいプレイ」がなんぼのもんだ〜と叫びたくなったけれど、それはいささか先走りすぎ。狙撃手スナイパー気どりのわたしもまだ、ターゲットをとしていない。それに、それをいっちゃうと、今までのわたしを全否定しちゃうことになる。あぶない、あぶない。


 今回わたしはアンタに会うにあたり、一つだけお願いをした。食事の前に家電量販店によってパソコン購入につきあってほしい、と。アンタは量販店で買うよりインターネット通販で購入したほうが安いといい張ったけれど、女心のわからないヤツだな。わたしはアンタと一緒に買いに行きたいのに。それに、ひとりで量販店に行ったけれど、結局どれを買ったらいいか決められなかった。こういうとき、アンタなら頼りになるはず。


 購入するパソコンはすぐに決まった。アンタが普段持ち歩いているノートパソコンと同じ機種。もっと見た目がかわいいパソコンもあったけれど、同じ機種にしておけば、なにか困ったときにアンタが助けになってくれるはず。アンタはもっと値の張る機種をすすめてくれたけれど、わたしの懐具合ふところぐあいもある。画像データをばりばり扱うわけでなし、持ち歩きに便利そうな小ぶりなサイズのこの機種、わたしは気に入った。


 そうそう、わたしとしたことがなんでパソコンを買ったのか説明していなかった。それは、わたしがいまのアンタとあの結香オンナの関係を探るため。アンタをとそうとしているいま、あの結香オンナが邪魔になるかもしれないからだ。わたしがアンタをあおったくせにね。


 そのためには、アンタの会社に「潜入」するのが手っ取り早いと考えた。ただ、いきなりは無理だろうから、まず派遣会社で事務職の経験を積んで、チャンスがめぐってくるのを待つ。あ、これだとチャンスがめぐってくる「かもしれない」・・・というレベルの話だな。それでももう、パソコンを買っちゃったし、あとは実行あるのみ。

(つづく)

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