スナイパーみき〜恋の狙撃手、ターゲットはあなた〜

須藤 彩香

プロローグ

 アンタにほれた。こんなはずではなかった。アンタのためを思ってのことだったのに、まさかわたしがアンタにはまるとは。たしかにアンタをあおったのはわたしだ。かつてアンタのことを憎からず思っていた結香オンナが今でもアンタのことを思っているかもしれない、と。そんなはずはないとアンタは笑っていたけれど、それはあの結香オンナに聞いてみなけりゃわからない。どうやって聞いたらいいか、試しに練習してみることにした。


 ここキャバクラはわたしの戦地しごとば。男と女で虚虚実実きょきょじつじつの駆け引きがくりひろげられる。フリーでついたアンタの接客。未練たっぷりの恋愛話、鈍感で相手の気持ちに気づかなかったマヌケ話で盛り上がった。アンタはあまりにもバカ男だった。


 それにしても、アンタのあの結香オンナに対するデリカシーのなさバカ男ぶり。わたしもほとほと、あきれ果てたよ。アンタをあおってみたものの、またデリカシーの欠片かけらもないことをいい出しかねない。アンタをあおった当事者として、同じ同性のあの結香オンナに迷惑をかけられないと思った。それが大まちがいのもとだった。


 わたしはアンタのことなめてたよ。アンタがあの結香オンナを想定して繰り出す言葉の数々、きいてるわたしがキュンキュンしちゃった。どんな言葉だったかは、とてもじゃないが恥ずかしくていえない(読み手のみなさんひとりひとりが想像してくださいね♡須藤彩香)。アンタも罪深い男だな。好きでもない「練習相手」のわたしオンナに、あれだけ言葉たくみに会話をくりひろげるなんて。これだと、あの結香オンナがその気になったのも、とてもじゃないが責められない。アンタは全くその気もないくせに。


 そんなわたしも、アンタの話を聞いてるうちにだんだん切なくなってきたよ。あぁその言葉、わたしにいってほしい。あなたのその言葉がほしい。わたしだけにいってほしい・・・・。


 バカ男にほれたわたしもとんだバカ女だ。いや、まてよ。マイナスにマイナスを掛けたらプラスになるか。も〜〜〜〜、いやっ。これじゃわたし、バカ男が恋しくて恋しくてたまらないみたいじゃない。いや、でも今のわたし、たしかにバカ男アンタのことを考えている。うじうじしてても仕方がないな。


 こうしてわたしは狙撃手スナイパーになった。絶対にとしてやる。ターゲットは翔太あなた

(つづく)

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