第27話

 閑話休題。

 先ずは、七つ星についての情報収集をせねばなるまい。

 そして、必要以上の情報はここでは考えないこととする——当然ながら、現状で相手の魔法の適用範囲が不明な以上、ここで変なことを考える訳には——。


「……失礼ね。わたしがそんな常時魔法を行使すると思っているの? だとしたら、心外ね」


 やっぱり読み取っているじゃないか。

 そう言おうとしたけれど、さらに雫は話を続ける。


「仮に『光の石』があったとして、それを無尽蔵に使えるほど人間の力は強くないのよね。人間は、人間が想像している以上に脆い生き物だから」

「……まあ、そこについては置いておくとして。だから、常時魔法を使えない、と?」

「使う気にならない、とでも言えば良いかしら?」


 雫は自分の分の紅茶を作り、それをティーカップに注ぐ。


「何故?」


 その魔法を使えば、色々と有利になりそうな気がするが。


「……今、この場に居るのは二人だけ。だから、魔法を使ってもそれ程負担は起こらない。けれど、わたしの魔法は、一定の範囲に居る人間の心の声を聞くことが出来る。……さて、これの意味するところは?」

「仮に百人居たら、百人の声が一斉に聞こえてくる……?」


 間髪なく答えたのは、未来だった。

 それを聞いて、ウインクして頷いた。


「ご明察。聖徳太子もびっくりよね。まあ、五人十人の声を同時に聞けるだけでも、十二分に凄い才能だとは思うけれど……」

「そうか。百人の声を聞けたところで、それを人間が処理出来るのかはまた別の話……」

「そうです。だから、だからこそ……、魔法を使うタイミングというのが重要になってくるんです。特定の相手にターゲットすることが出来ませんから」


 紅茶を注ぎ終え、ようやく席に座る雫。


「……成程」


 未来は一言そう言って、頷いた。


「七不思議に興味がある、と言っていたわよね?」


 雫は、話し疲れたのか紅茶を一口啜ると、ふう、と息を吐いた。


「ええ、そうです」

「理由は?」

「理由……ですか」

「ええ。何も、理由なしに七不思議に興味がある、って訳でもないでしょう? 興味本位で、ってだけかもしれないし、或いは明確な理由があって七不思議を解明したいのかもしれないし」

「……理由は話せないけれど、七つ星に会いたいんだ」


 おれは意を決して、雫に告げた。

 未来が目を丸くしてこちらを見ていたが、そんなことはどうだって良い。

 今は、目の前の相手が敵であろうと味方であろうと、公開出来る範囲で自分の手の内を明かすのが得策だと思ったからだ。


「……七つ星、ねえ。確かにそんな雰囲気はしていたよ。七つ星に関する話をしたときの食いつき度合いが違っていたからね。まあ、別にそこに関して深掘りする気はないし、興味もない。何せ、七つ星は居るか居ないかさえ分からない——このアカデミアの生徒でさえも、見たことがない存在なのだから」


 引っかかるのはそこだ。

 七つ星に認定されるということは、少なくともアカデミアの生徒でなければならない。

 それでいて七つ星の認定試験に勝ち上がらなければならない。

 そしてその試験は——少なくとも公開試験であることは、事実であるはずだ。

 つまり、七つ星に上がったタイミングで、確実に誰もがその顔を見ているはずである。

 だのに、それを見たことがない、認識したことがない——それはあまりにもおかしな話だ。

 まるで、記憶操作でもされているかのよう……。


「とはいえ、」


 雫は言った。


「わたしはただの生徒とは違う。七不思議——ひいてはをオカルトを研究する同好会に所属している訳なので、それなりに調査をしているのです。結果的にオカルトでも何でもなかった……なんてことは、正直良くあるけれども、それもまた致し方ない点かしらね」


 オカルトを研究しているから、それが正しいと証明されれば嬉しいことなのだろうけれど、現実はそう甘くない——ということか。

 まあ、致し方ないと言えば致し方ない。

 現実は科学技術が興隆している世界だし、魔法を科学的に再現出来てしまう世界になってしまっているのだし。

 ……メカニズムは、きっとおれたち生徒にはさっぱり分からない領域なのだろう、というのは想像に難くないが。

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