第28話

「それにしても……、七不思議という概念に溶け込ませる、というのは七つ星も考えましたね」


 雫が外に出た間に、唐突に未来はそう言った。

 確かにその通りだ。七つ星を隠しておこうというためには、どうすれば良いのだろうか——と考えた時に七不思議を隠れ蓑にするというのは、なかなか考えた策だと思う。それを実現するためには、外部の人間の協力が必須であることは間違いないだろうが。


「まあ、確かに。少なくともおれの思考ではアイディアが思いつかない。となると、助けてもらう必要があるけれど——」


 おれの話に割り込むように、タイミングよくスマートフォンが細かく震え出した。

 画面を見ると、相手は予想通り——。


「もしもし」

『もしもし、困っている様子だと思ったのだけれど、合っているかな?』


 間違っちゃいないけれど——と思いながら、おれは相手の——翼の声を聞いた。


『反応がなければ否定ではないと見做すけれど。ところで、情報は収集出来たかな?』

「まあ、ある程度は。でも、全然七つ星には辿り着きそうにないぞ。そっちは?」

『こっちは……まあ、ぼちぼちってところかな? 正直、雲隠れしているから何とも言えないんだよねえ……。ま、一応違うルートで調査しているから、分かり次第連絡するよ。そっちの情報も教えてもらえるかな?』


 そう言われたので、おれは現時点で得られた情報を説明する。

 話を聞き終えて、翼はうんうんと言った後に、


『……七不思議かあ。良く考えたよね。確かにその情報はこちらも得ているけれど、それにかこつけているのか、或いは七不思議をそのために作ったのかは知らないけれど……、いずれにしても、それを調査する必要があるねえ』

「了解。取り敢えず、こっちも情報収集に努めるよ」


 電話を切って、ふうと溜息を吐く。


「どうでしたか?」


 未来の問いに、おれは答える。


「向こうも手こずっているみたいだな……。だから、こっちで何とかするしかないと思う。アイディアが出てこないのはちょっとネックだけれど……。先ずは、唯一の手掛かりになっている、七不思議を解明するしかないだろう——」

「お待たせ!」


 ガラガラと扉を開けて、雫が入ってきた。


「いや、待っていないよ。……ところで、七不思議の解明というけれど、どうすれば良いのかな」


 おれの問いに、雫は答える。


「先ずは、一つずつ解明していこう。そのために鍵を借りてきた。……と言っても、昔みたいな鍵束を借りる必要はなくって、カードキーを一枚借りるだけなのだけれどねえ。だったら簡単に権限付与ぐらいしてくれれば良いのだけれど、それをする手間よりもカードキーを貸した方が早い、って考えなのでしょうね」


 そう言うことなのか。

 まあ、いいや。取り敢えず、やるべきことを進めよう——そう思いながら、おれはそれに従うのだった。



 ◇◇◇



「少しずつ、近づいているようだね?」


 ネプチューン・アカデミア、学生寮の一室。

 少年が大きなモニターを眺めながら、うっとりとした表情を浮かべている。


「こちらが探すまでもなく、彼らはこちらへ近づこうとしています。……それについては、問題ありませんか?」


 少年の側には、サングラスの少女が立っている。


「勿論。警戒はすべきだけれど、こっちからわざわざ追いかける必要性は皆無だね。あの能力——やっぱり手に入れたいし。まあ、それは別に良いかな。いつかは手に入るものだからねえ」


 サングラスの少女は、深い溜息を吐く。


「……言いたいことは分かりますけれど、彼らには七つ星が付いています。あまり油断されない方が宜しいかと」

「そうなれば、ぼくが出てくれば良いじゃん。ただ、それだけの話でしょ?」

「……それは、」


 否定出来なかった。


「はてさて、これからどう進むのか……。先ずは実力を確認しておこうじゃないか。彼らがぼくに挑む資格があるのかどうか、さえも分かっていないのだしね」


 そう言って、二人の会話はここで終了した。

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