第40話 虐げられヒロインが、颯爽と登場したヒーローと恋に落ちる瞬間
亜美を守る位置取りで、ハテアイや三浦に対峙する方向に身体を向けていた
「けどさ、ボクも後々気付いたけど、コイツには心が伴ってないんだ。責任もない。欲求だけだ。だから何でも言える。目的のものを手に入れて、ソレで満足してしまう。ゲーム感覚なのさ。
けど、こっちは生身の人間だ。手に入れられてこっちに何の利がある? 気持ちの安寧? いっときだけはね。けどその先にもボクたちには生命活動がある。コイツの満足と引き換えに、こちらはどんどん飢えて弱って行く。
コイツはソレを意に介さない。手元に置いておくことで満足だからな。儚くなれば、次を求める。実にあっさりと。元カノのボクが言うんだから間違いないよ」
ふいに、ハテアイがパソコンを持つのとは逆の手を伸ばして来た。
「んにゃっ!? この出会い厨っ……」
慌てて飛び退いた
壊れ物を扱うように、慎重にゆるゆると手を動かし、撫でる。
ギクリと一瞬体を強張らせた亜美だったが、
「ね?」
亜美の瞳を捕えたハテアイが、一際
その瞬間だけを切り取れば、虐げられヒロインが、颯爽と登場したヒーローと恋に落ちた瞬間。けれども亜美にはカレ(多分)が居るし、ハテアイは素性の知れない出会い厨(疑い)の人物だ。そう考えた途端、
「うにゃぁぁああっ! 色気駄々洩れの危険人物が、恋愛経験値の少ない中2女子にっ、大人げない手管を使うなんてっ!! 恥を知ってください!」
亜美を抱え込んで、ハテアイから護る姿勢をとる。撫で続ける手を、
「ひどいなぁ」
全くそう思ってもいないハテアイの口調だ。さらには「AIよりもずっとあっさりしたアプローチだと思うけど?」などと嘯いて、反省の様子もない。だから
ふしゃーっと、全身の毛を逆立てんばかりの
「あんた……あたしのこと」
弱々しげな声に、
「弱ってる人を見たら助けたいって思うのは、わたしの中では普通です。それが、わたしの隣の席の、ちょっと意地っ張りで素直じゃなくて、謝るのも苦手な
迷いなく、きっぱりと言い切る
「なんで」
亜美の問いは、上っ面の仲間とは違い、独自の行動理念を突き通す
「亜美ちゃんを取り戻して、謝らせる。取り戻すのが目的ではなく、謝らせるのが目的です。わたしは腹黒なのです!」
ふふんと、偉そうに胸を逸らして、凡そ天使らしくない、むしろ悪役令嬢が高笑いするポーズを決めた
「クラスメイトだとか、仲間だとか、そんないかにも優しい言葉では説明しないのね。そう括った方が、大勢の中で生きやすいのに。あんたも大概人付き合いが下手くそよね。友達少ないんじゃないの」
「にゅぐぅっ」
「まぁ、数が居てもどうってこと無いことだけは、今回のことでよく分かったけどね。オトモダチの少ない
弱り切った表情から、必死に自分を立て直そうと、強引に嫌味な笑い顔を作った亜美の目は、今や真っすぐ
ごとり
目の前に立つ人間に、注意の移った亜美の手から滑り落ちたタブレットが、硬い床に当たって音を立てた。
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