パート3: 神様からのプレゼント? ~チート能力お披露目会(脳内)~


ふぅ……。

少しだけ、落ち着いてきたかもしれない。


転生。

その事実は重いけど、くよくよしていても始まらない。

私はこれから、「セシル」として、この世界で生きていかなきゃいけないんだ。


(伯爵令嬢、か……。前世とは全然違う生活になりそうだな……)


不安しかないけど、やるしかない。

そのためには、まず情報収集だ。

この世界のことも、この「セシル」って子のことも、何も知らないんだから。


(あと……できれば、何か……こう、転生者向けの特典とか……あったりしないかな?)


ちょっと期待してしまうのは、仕方ないと思う。

だって、いきなりこんな世界に放り込まれたんだから、それくらいのご褒美があったって……。


そう思った時だった。

部屋の窓にかかっている重そうなカーテンが、ふわり、と揺れた。


(……ん?)


窓は閉まっているはずだ。

隙間風? いや、そんな感じじゃない。

まるで、誰かがそっと持ち上げたみたいに……。


(気のせい、かな……?)


喉が渇いたな、と思った。

部屋の隅にあるテーブルの上には、水差しとグラスが置かれているのが見える。

侍女さんが用意してくれたんだろうか。


(水、飲みたいな……)


そう思った瞬間、テーブルの上の水差しが、カタッ、と微かに音を立てた。


(え……?)


気のせいじゃない。

今、確かに動いた。ほんの少しだけど。

まるで、私の「飲みたいな」って気持ちに応えるみたいに。


(まさか……ね)


でも、胸がドキドキし始めた。

もしかしたら、という期待。


(もし、これが本当に……私の意志で動かせるんだとしたら……?)


試してみよう。

何か、こう……分かりやすいものを。


(そうだ、鏡……! 自分の顔、まだ見てないし!)


今の私がどんな顔をしているのか、すごく気になる。

伯爵令嬢ってことは、それなりに整ってるのかな?


(鏡……鏡が見たい! 今すぐ、ここに!)


心の中で、強く念じる。

お願い! もし何か力があるなら、鏡を出して!


すると。

ぽんっ、という軽い音と共に、目の前の空間から、何かが手の中に落ちてきた。


「うわっ!?」


思わず受け止める。

それは、手のひらサイズの、装飾が施された銀色の手鏡だった。


(……え?)


持ってる。

確かに、私の手に、鏡がある。

さっきまで、どこにもなかったはずなのに。


(どこから……? どうやって……?)


心臓が、バクバクと早鐘を打っている。

息が詰まる。


(これって……もしかして……)


転生特典。

チート能力。


(本当に……あったんだ……!!)


信じられない気持ちと、込み上げてくる興奮。

これは、ただの偶然じゃない。

私の意志に応えて、この鏡は現れたんだ!


(神様……いるならマジ感謝……!!)


まだどんな力なのか、全容はわからない。

でも、この力が、この先私が生きていく上で、大きな助けになるかもしれない。

そんな予感が、強く胸を打っていた。

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