第18話 もっとマシな訓練

 ヒールの訓練は、本当に雑だと思う。

 シューちゃんの許可を得て、ヒールの集団訓練なるものを見たことがある。


 集団訓練というものがまずおかしいと思います。まあ、人数がそこそこ多いうえに生き残っているヒールが少ないから仕方ないとも思う。しかしですね? ヒールの大先輩一人と同じ動きを集団でしてもらうだけならば、オンラインでいいんですよ。いや、映像授業で構わないんですよ、なんならさ。


 いやあ、こういうところで時代の遅れを感じますよね。西暦何年だと思ってんだよ……デジタル化が進んでいる世の中なのに! なぜ! ヒーローとヒールの最前線と言われている日本がこんなに遅れているんだ!? 言い訳ばっかりしてないで、もっとお勉強したらどうなんですかね? ていうか! まず政治の仕方がな……!


 ごめんなさい、めちゃくちゃに話が逸れてしまいました。


 現代日本の現状なんてどうでもいいよね、ごめんね。






 とりあえずですよ。そんな遅れた大日本帝国さんの集団訓練のせいで、かなり戦闘の才能がある黒パーカーちゃんは、本来の実力を発揮できていないわけです。






 と、いうことで……訓練です。






「なあ、今更なんだけどさ」

「どうしたの?」


 カキンッ! キンッ!


 話しながら戦闘を続けることができるぐらいには、黒パーカーちゃんはこの小一時間で実力を上げていた。


 素晴らしい……やはり、優秀な才能の持ち主ではないか!?


「この訓練って意味なくね?」

「え!? どうして!?」


 対人戦において最強な私の戦闘訓練が意味ないとでも!?


「だって、私は死ぬんだぞ?」

「死なない可能性があるから、こうやって訓練しているんだよ」

「は?」

「私の必殺技で君は死なない可能性があるの」

「いや、え? 無能力者だよな?」

「黒パーカーちゃん、能力の覚醒は知ってる?」

「なにそれ?」


 知ってたらマジで焦った。

 そうだよね! 知っているはずがない!


 よかったぁ~。


「知らないならそれでいい。とにかく、あなたは私の必殺技で死なない可能性があるの。死ななかった場合、事実上は死んだことにします」


 よく落ち着いた声で話せているな。

 さすがだよ、わたし。


「それってつまり……」

「あなたには生き続けてもらう」

「うわあ、地獄の生活の始まりじゃん」

「そうなることを切に願っているよ」


 能力を覚醒してほしくないけど、生き続けてほしい。





 何とも言えない気持ちのまま、戦闘の訓練を続けていく。

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