第15話 世界が変わる、その直前

「本題に入ろうか、二人とも」


 改まった口調。

 私だけだったらどんな感じだろうとか、そういう想像をやめる。


 ただ、シューちゃんの言葉に耳を傾ける。






 世界が変わる瞬間を目撃するのだから……。






「単刀直入に言おう。法律が変わった」

「……」

「は?」


 こういう大事なとき、大事な瞬間は、嚙み締めて飲み込む時間が必要になる。

 大ちゃんは、その衝撃を砕く必要があった。


 しかし、シューちゃんは砕く前に畳みかけてくる。


「サポーターは処刑代行を遂行できる」

「……うぇ? つ、つまり……」

「簡単に言えば、ヒーローは殺しをしなくてもよくなった。大門が殺しをする必要がなくなった、とも言えるね。サポーターが悪者を倒せればの話だけども」


 ぽかーん、と口を開けたまま静止する大ちゃん。

 ちょっと笑いそうになってしまった。


「は、はああぁぁぁぁぁぁ!?」


 ものすごい声が、ビル中に響いてしまった。









「大ちゃん……うるさい……」

「大門……そこまで騒がなくても」

「いや、いやいやいやいや! 騒ぐだろう!? だって、ええ! ていうか、どうやってそんな法律改正だなんて」


 もっともな疑問である。

 何十年も変わらなかった法律が、いきなり変わったのだ。


 何かがおかしいと見るのは当然だ。


「大月彩夏と野々宮秀介、この二人が裏でコソコソと根回しをした結果がこれだよ」

「あや、シューちゃん……あんたら、何をしたの?」

「それは言えないよ、大ちゃん」

「なんで?」

「君、死にたいの?」


 私の言葉で、すべてを察したようだ。


「あんたらに……こ、これだけは言わせてくれ」

「どうしたの?」

「なんだい?」


 大ちゃんは、何かを嚙み締めるように、一言だけ……言の葉を紡ぐ。







「ありがとう」







 彼からの精一杯の言葉だった。

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