第14話 いちばんえらいやつ、ヒーロー機関で。
ヒーロー機関の総本部的なビルのとある一室にいました。
おそろく、会議室です。
「またお前らか! このアホンダラども!」
私と大ちゃんは、ヤクザに怒られておりました。
…………というのは嘘で、ヒーロー機関の一番偉い奴に怒られている。
あ、ちなみにこいつは私の同期だよ。
出世街道まっしぐらどころか、直進した結果がヒーロー機関最高長、みたいな名前の一番どえらい人になった。すごいよね、有り得ないよね。うんうん、気持ちはわかる。たった五年で一番偉い地位に立つってどういうことだよって、マジで思う。
ちなみにちなみに、こいつとは幼馴染だよ。
「すんませーん」
「ごめんなさい……」
大ちゃんは完全に委縮してしまっている。
ていうか、これが初対面だから仕方ないか。
「神宮司大門、君は良いとしよう。なぜなら反省の色がすごく見える。だけどな……おおつきあやかぁぁぁ! てめえには、傲慢の色が見えるぅぅぅ!」
私は毎回の如く怒られているし、シューちゃんとは付き合いが長いから、こういうときの対処には慣れている。
「あのさ、そうやってヤクザみたいな口調にすれば怖がられるっていつまで思ってんの? そんなんだから友達いないんだよ? 彼女いない以前の問題よ? ていうか、簡単に”人の色を見る”のやめてもらえる? 誰がやられても不快だよ?」
こういうときは、シューちゃんが気にしている欠点をばーっと言ってやる。
そうするとほら、まずは黙りこくる。
「……」
そのあとは、お決まりのセリフ。
「そこまで言わんでええやん……」
そして、机に突っ伏す。
可哀そうな奴。
「え、あれだけでしょぼくれんの?」
小声で私に話しかけてくる大ちゃん。一応、私と彼の関係性は説明済み。
「そだよー。これでやってけんの? とか思った?」
「え、まあ……うん」
「おふっ!」
「聞こえているみたいね」
「ご、ごめんなさい!」
「いや、僕の問題だから……君は気にしなくて大丈夫だよ……」
相変わらずの地獄耳だなぁ。
割とちっさい声だったけどなぁ。
「大ちゃん、こう見えてもシューちゃんはね」
「野々宮秀介と呼んどくれ……」
「黙れ。へたれ、ポンコツ、馬鹿」
「うぐ……そこまで言わんでもええやん……」
うるさいときは、罵倒するに限る。
「ひっでぇ……」
大ちゃんが何かを呟いた気がした。
まあ、気のせいだろう。
「こういう態度や口調をするのって、私と会話しているときだけなんだよ」
「え? あ、まあ……そっか……テレビで見るときは普通の口調だしな」
「そそ、そういうこと」
「てっきり、普段はああいう感じの人なのかなって思った」
「ああいう感じなのは私の時だけなのよ。幼い頃から、あんな感じ」
小さい時になぜか、急にこの口調に変わったんだよね。
それまでは弱々しい男の子だったのに、それからはなんか逞しくなったなぁ。
なんでだっけ?
「まあ、変な誤解を解いてあげたところで……そろそろ本題に入ったら?」
急に顔を上げるシューちゃん。
しっかりしないといけない場面では、ちゃんとしている。
これは彼の良いところだ。
「神宮司大門……ここでは、大門と呼んでいいかな?」
「あ、えと、もちろんです」
「ありがとう、大門。僕のことも彩夏みたいにシューちゃんって呼んでいいからね」
朗らかな笑顔で感謝を述べるシューちゃん。
その笑顔に大ちゃんは緊張がほぐれてきたみたいだ。
「え、いいんですか?」
「もちろん! うちの彩夏の面倒を見てくれているんだから、これぐらいは当然!」
抗議したい気持ちとぶん殴りたい気持ちを必死に抑える。
うん、ここはシューちゃんの見せ場なのだ……!
「シュ、シューちゃん? で大丈夫ですか?」
「敬語も外していいよ、仲良くやっていこうぜ!」
ニカッ! と笑みを浮かべながら、手を差し出すシューちゃん。
「えっと……だよな! これからよろしく! シューちゃん!」
その手を握る。
緊張のほぐれたいつもの大ちゃんになる。
よしよし、これで本題に入れるぞー。
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