第4話 あんな可愛い子と別れるって、どないなことなんやろ?
20世紀のいつか、雅子大学3、明彦大学2
もうすぐ夏休みいうある日の金曜、その時もうちと明彦が部室で二人っきりになった。もう夕方になってて、陽も暮れかかってた。
「ベラスケスの『宮廷の侍女たち』見にプラド美術館行きたいな」って彼に言うた。
「ぼくも行きたいですよ、プラド。バイトで旅費を貯めて来年ぐらいに行こうかなあ」
うち、ニコッと笑って「あら、うちも来年の夏ぐらいに行きたいな思うて、貯金してるねん」って彼の顔見た。「なぁなぁ、明彦、うちと一緒にプラド行こ?どう?うちと一緒やったらあかん?」うちらベンチシートに隣同士で座っててん。うち、明彦に顔寄せてボソッと聞いてみた。ドキドキした。
「いいですよ、雅子さんとヨーロッパ旅行なんて楽しそうだ。でも、ぼくで良いんですか?旅のお供が?」
「明彦やさかい一緒に行きたいねん」
「ぼくとだからスペインに?」
「そう。明彦とやさかい行きたいのよ。あ、もう日ぃ暮れてるわ。遅なってもたね。明彦、この後予定ある?」って言うた。今日は特別サービス、いつにもまして京都弁の出現頻度多くした。
「なぁ、これから、明彦、居酒屋飲みに行こ」
「いいですよ、雅子さん」
「そのさんづけ、止めて。雅子でええわ。じゃあ、決まりな。神楽坂、上がったとこにええ居酒屋あんねん。うちのマンションの近うなんやけど」うちのマンションの近うやで?誘い方、際どいかしら?
「わかりました。行きましょう。じゃあ、雅子って呼びますよ。実は、雅子、その雅子の京都弁、ゾクゾクしちゃうんですよ」
「感づいとったわ。うちが方言で喋るとうちの顔見てモジモジするんやもん。キミは標準語しか喋らへんもんな。物珍しいんかしら?それで、どうゾクゾクしてたん?性的にゾクゾクしたん?」って大胆なことうち言うてしもた。
「そ、そうです、実は…」
「エッチな男の子やなぁ?」
「だって、雅子、可愛い顔してるし、ボイッシュだし」
「あら、おおきに。キミのタイプなん?うち?」
「ハッキリ言うてそうです」
「うち、年上やで?」
「学年が一つ違うだけでしょう?それに同じ年生まれで、数ヶ月しか生まれた月は違わないでしょう?じゃあ、雅子はどうなんです?ぼくのことどう思っているんです?」
「直球で聞くやなぁ。うちもキミのこと、タイプやで」
「うれしいです。じゃあ、ぼくら、付き合っちゃいませんか?」
え?ええええ?「もっとすごい直球でくるなぁ。ええよ、初めて会うてから、明彦が好きやったん。って、うち、すごいこと言うてる?」自分で言うてて恥ずかしい。顔が火照る。
「うれしいです。ぼくは最初に会ってから雅子が好きでした」
「今度はうちがゾクゾクするわ。ああ、もっと言うて」
「ぼくは雅子が好きです」
「ちょっと待って。明彦、キミ、付き合ってる子おるんちゃうの?」あの子はどうしたん?うち、二股かけられるような女やないで?
「実は、高校三年の時から高校の同期の友人の1歳年下の妹と付き合ってました。でも、別れちゃって。今は、付き合っている女性はいません」え~、ウソついてへん?あの合格発表の時の可愛い子と別れてしもたん?あの子は友達の妹やったん?ほんまに?
「ほんま?今は誰とも付き合ってへんの?」
「ええ、いろいろあって、今年の2月に別れちゃったんですよ。その話は…その内します」あら?結構深刻そうなことなん?立ち入って聞いてええような感じちゃうわ。
「ええわ。今はその話聞かんとおくわ」
「雅子、ありがとう。ちょっと込み入ってるんですよ」
「了解!ほな、神楽坂のうちの知ってる居酒屋行きまひょ」
やけど、気になる。こんな可愛い子と別れるってどないなことなんやろ?気になるなぁ。
気になる、気になる、気になる、気になる、気になる、気になるぅ!
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