第32話 新たな可能性、見出しました!
私、魔法使いのメオ! こっちは絶賛噴火中のボンガクウ火山!
コイツ等火山で採掘してたのかよ! 確かに火山から取れる鉱脈ってあるけどさ!
っていうかそういう情報は先に言って! 遠目に見たら普通の山にしか見えなかったよ!
大地震起きちゃってるし、噴煙上がってるし、なんか噴石降ってきてるしで、もう死ぬー!
「嬢ちゃんダメだ! 逃げた方がいい!」
うっそおおおお! 配属初日で街破壊なんてしたら、私の借金どうなっちゃうの!?
えへ、すいません、火山噴火させて町無くなっちゃいました、てへぺろ。
なんて通用しない! あの爺さんは容赦なく私の命を刈り取りに来るよ!
「ケビンさん! この山の反対側って、どうなってます!?」
「反対側!? 何もねぇ森が広がってるだけだ!」
何もない、人がいない、なら、そっちだ!
「〝
まずは、山を元の形に戻す!
「おおおおおお!? 山が戻ったが、大丈夫なのか!?」
ダメに決まってるじゃん! 溶岩の流れが魔力と共に伝わってくるよ!
だから、次の魔法を発動させる!
「万物従属」――――「〝形状変化〟ストーン・ゾナ・アルフ!」
さっきので山の全景は何となく覚えた!
だから、反対側に大きな穴を開ければ、噴火はそっち側に集中するはず!
頑張れ私! 私なら出来る! やらなきゃ死ぬ! やらなきゃ殺されるんだから!
「せいっ、やああああああああああああああ!」
全魔力注入! 山の噴火口を、反対側に作れえええええぇ!
☆てへぺろ☆
「配属初日に噴火させて街を破壊していたら、それはそれで話題になっていたでしょうね」
ここは第三
ケビンさんに工場まで運んでいただけたものの、意識戻っても全然動けないの。
長椅子で横になったまま、とりあえずの休息タイムなのだけれども。
「本来、噴火での被害は天災ですので、補償等は発生しないのですが」
「……ディアさん、その先は言わないで」
「ダメです。今回は管理ギルドがメオさんの魔法利用を確認してしまっているので、天災ではなく人災という判断が下りました。ただ、幸いなことに負傷者は発生しませんでしたので、噴石により破壊された町の復旧をして頂ければ、問責は発生しないとのことです」
ああ、良かった、私のせいで誰か亡くなっていたら洒落にならなかったよ。
「街を直すぐらいなら、魔力回復すれば、なんとか」
「そう言うと思いましたので、既に返答はしてあります」
さすがディアさん、私という人間を分かってるね。
「他、作業員たちへの労務管理に関しては私の方でまとめておきますが、そもそも工場が動かないと人件費だけで出費だけがかさむ状態となってしまいますので、早めの稼働をお願いします。というか、火山調べたんですよね? 原料とか、使えそうな物はありましたか?」
「いや、調べようとしたら噴火しちゃったから、全然、何も確認出来てないの」
「そうですか、炉や成型の方は問題無さそうなので、後は原料さえあれば稼働できそうなのですが」
うぅ……今日はダメダメな一日だったなぁ。
こんなんじゃケビンさん達も私を見限っちゃうだろうし、最悪、人集めからやり直さないとかも。
「おい、工場長の意識が戻ったってのは本当か?」
あ、ケビンさんたち作業員の皆様がやって来ましたね。
あれかな、これ以上一緒に仕事出来ませんって、辞表でも出しにきたのかな。
「あの……えっと」
横になってちゃダメか、起き上がらないと。
「いや、無理しなくていい、あれだけの大魔法を使ったんだ、起き上がれないだろ?」
「おっしゃる通りでして……では、横になったままですみません」
ここまで魔力使ったの、生まれて初めてかも。
ロウギット石切り場の時も使い果たしたけど、こんな状態にはならなかった。
根っこから魔力全部持ってかれた感じ。溶岩とか大地のエネルギーとか、本当に凄かった。
「工場長、俺達に何かできる事はあるか?」
「……え?」
「アンタはこの街を救ったんだ、俺達に出来ることがあるなら何でも言って欲しい」
街を救ったって言うか、むしろ壊滅させそうにしたんだけどね。
でもまぁ、そういう風に勘違いしてくれるのなら、そのままで良いか。
「すっごい魔法だったな! 山が動いてたんだぜ!?」
「採掘する必要もないんじゃないか!?」
「なら、今後は製造に専念出来るな!」
「凄い人が来てくれて、この街も蘇るかもしれねぇ!」
なんか、必要以上に持て囃されてるみたいだけどね。
でも、その持て囃しは、この工場内だけではなかったんだ。
「わ! 凄い、魔法で石畳直してる!」
「建物の壁や屋根も全部魔法だ!」
「凄いなぁ、凄い人が来てくれたなぁ」
「ママ! 私も魔女になりたい!」
ボンバクウの火山で被害が出てしまった場所を、魔法で直しているんだけど。
それだけで人が集まってしまい、私は無駄に注目を浴びてしまう。
ランボリピーの街の時も思ったけど、魔法自体が珍しいものみたい。
セメクロポさんも、確かこの国全体を探したけど、一人もいなかったって言ってたもんな。
ウエストレストの森もどこにも無いし、改めて思うと、私ってどこに飛ばされたんだろう。
「工場長、お疲れ様です! これ、ディア副工場長から差し入れです!」
ツナギ姿の女の子が食べ物を持ってきたけど。
こんな子いたかな? 赤毛のショートカット、まん丸の赤い瞳が可愛らしい。
「ありがとう……黒パンと牛乳、ちょうどお腹減ってたの、助かります」
直しかけの石畳を椅子に変えて、そこに座ってちょっと昼休憩っと。
「凄い、石畳が椅子になった」
「魔法ってあんなことも出来るんだな」
「いい人が派遣されたもんだ」
街の人にぱちぱちぱち……って、拍手された。
あはは、別に、大した事してないですけどね。
「じゃあ、頂きます」
固いパンだけど、口の中で牛乳と混ぜれば丁度いい感じになる。
生地にハチミツが混ざっているのかな? ほんのりと甘い感じ。
「……」
あの、なんか、赤毛の子にじーっと見られてるんですけど。
キラッキラの瞳、悪意は無いんだろうけど、食べ辛い。
「あの」
「あ、す、すみません! 私、お邪魔でしたか!」
「ううん、大丈夫。工場に女の子なんかいたかなって思って」
これまでの流れではオジサンばかりで、こんな子はいなかったと思ったけど。
見れば、ツナギも綺麗だし、手足も細い、普通の女の子って感じだ。
「いませんでした、今日が初出勤です!」
「ああ、やっぱり」
「はい! 父に命じられて、今日から工場長のお世話係をすることになりました、ヒマリと言います! どうぞ宜しくお願いします!」
「ありがと、私、メオ・ウルム・ノンリア・エメネ、メオって呼んでね」
「はい! メオ工場長!」
差し出した手を両手でつかんで、ヒマリちゃん、鼻息あらく瞳をキラキラと。
「あの……良かったら、座る?」
「え、いえいえいえ! 私なんか立ったままで充分ですから!」
「まぁそう言わずに……立って見てられると、なんか圧を感じるのよね」
座りやすそうな椅子を作ると、また拍手を送られてしまった。
「工場長って、凄いですよね」
「私が凄い?」
「はい、だって、この街で女子供は役に立たない存在なのに、こうして周りから認められているのですから。しかもそんな凄い人のお世話係を命じられて、私はもう、なんていうか、嬉しいのと尊敬で、ちょっと頭の中がパニック状態っていうか」
椅子に座って足をふりふりさせて、こっちを見て赤面すると、また足をふりふりと。
にしても、女子供が役に立たないって、随分な物言いだね。
「そういうところから変えていかないとかな」
「……あの、メオ工場長」
「うん?」
「私も、魔法とか、使えたりしませんでしょうか」
……、なるほど。
この街の女の子って、基本的に立場が弱いんだ。
力仕事がメインの街だから、仕事は誰でも出来る簡単なものばかり。
それが男たちの助長を生み、この街では女というだけで委縮するしかなくなる。
だからか、初日にあんな態度を取られたのは。
この街の人は、女が上に立つのを基本的に認めていない。
よっぽどの事が無い限りは、絶対に認めたくもないんだ。
「……あの、工場長」
「うん、この街に必要なものが分かった」
「え」
「使えるようになろっか、魔法」
「ふぇ」
見た感じ、素質はある。
山に生きる民だからかな、私と同じ属性を感じるんだ。
魔法を使うには魔力が必要、ヒマリちゃんからはそれを僅かに感じる。
工場にも魔法球があったんだ、過去、この街には魔法使いもいたのだろう。
「じゃあまずは、魔法がどんなものか、一緒にやってみよっか」
「え、やってみよっかで出来るものなのですか?」
「うん、私の手を握ってくれる?」
掴まれた手は、洗い物やモノ運びをしているせいか、ちょっと固い。
握られて分かる、魔力量は大したことないけど、ゼロじゃない。
お母さんやお婆ちゃんみたいな大魔法は無理だけど、日常生活を変えるぐらいなら。
「万物従属」――――「〝形状変化〟ストーン・ゾナ・アルフ」
小石へと魔力を注ぐ感覚、イメージ、そういうの理解するところから、魔法は始まる。
「なんか、ねばねばした光が見えます」
「それが魔力、何でも出来るように見えて、実のところ違うって、分かるでしょ?」
「はい、手で物を掴むように、魔力で掴んでいるのですね」
私の属性は石だから、土属性魔術師みたいなことは出来ない。
だけど、石や砂の性質を変えて、形状を変化させることなら出来る。
「魔力量は生まれ持ってのものだから、努力で増やすことは出来ない。だけど、魔法を練習することによって、練度を上げることは出来るの。手先が器用になるって感じかな。今は石を包み込むことしか出来なくても、やがては石を潰し、形を変えて生み出すことが出来るようになるよ」
小石を潰し、丸い玉に変えると、それをヒマリさんへ。
「え、頂けるのですか?」
「うん、残念ながらヒマリさんの魔力だと、それぐらいの大きさの物ぐらいしか加工出来ないと思う。さっきも言ったけど、魔力量って生まれつきの物だから、それを増やすことが出来ない。さっき見せたネバネバが、ヒマリさんはこの小石ぐらいしかないって言えば、分かりやすいかも」
ウエストレストの森が排他的だったのって、これが要因なんだろうなって、今なら分かる。
他所から男の人を連れて来るけど、基本的にその人との子供しか作らないから。
段々と薄まっていくけど、私みたいな突然変異が産まれて、それで魔力の帳尻を合わせるんだ。
なるほどね……でも、こうしてヒマリちゃんみたいに、薄まったとしても、魔力を保持している子は確かに存在する。セメクロポ領主補佐官が国中を探したって言ったけど、多分、私みたいな魔法が使える魔法使いを探したんだろうね。魔力の有無なんて、普通の人じゃ分からないだろうし。
……。
……ん?
何か、ひらめきを感じたぞ?
魔力を持っている子を探し出して、私が鍛えれば……マンタクちゃんに使える?
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