第20話:めでたし、めでたしで終わるのは物語。(後)
保波姫が母親と共に本家との「折衝」を行うのは、まあ要するに幼女を投入して場を和まして円滑に会議を進める、以上のことは存在しなかった。
そう、そのはずだったのだ……。
「本日は、主人豊樹の名代として参りました、垣屋伊吹と申します。此方、娘の保波でございます」
「ほ、保波です、よろしくお願いします」
どうしてこうなった! ……てか、「お母様」って伊吹って名前だったのか。知らんぞそんなこと。いやまあ当たり前か。
「ほほう、お前さんが儂の玄孫か! いやあ大きゅうなったのう!」
うわっ!? いきなり持ち上げられた!
「ほほほ、貴男。腰をいわさんようにしてくれます?」
側に居た老婆が上品そうに笑いながらこちらを眺めている。どうやらあれが高祖母らしい。てーか、下ろしてくれ、頼むから。若干怖いよ。
「何を言うか! ……ほーれ!」
みゃーっ!? 高い、若干怖い。あと、孫や曾孫が可愛いのはわかるが、
「さて、折衝じゃったな。儂としてはこんなにも愛らしい玄孫と逢えた故、無条件で頷いても良いのじゃが……。……とはいえ、二品となるとそうもいかんでな。……用件はなんじゃ」
……にしな? なんかよく分らんが、本家の人は苗字が違うのか? いやでも、うーむ。
「はい、娘もまだ神の内とはいえ、そろそろ物心つく頃。そろそろ紹介しておこうかと思いまして」
神の内ってことは、まだこの身体はやはり七歳未満か。上等、予想があっているだけめっけもんだ。
「それだけではあるまい。この利発そうな顔。何が望みじゃ?」
「……本家との縁組みか、あるいは今現在旅立っている勇者様に献上しようかと思いまして……」
「ふむ、可哀想にのう、斯様な歳から縁談先を決められて……」
……会話の内容はなんとなくわかった。そりゃ上流階級の女の子となれば政略結婚は世の常だわな。その辺は解っているし納得もできるが、折衝の内容ってそれだけなのか?
善役令嬢物語 エトーのねこ(略称:えねこ) @H_Eneko
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