私だけに効く「春の魔法の言葉」
星空 花菜女
私だけに効く「春の魔法の言葉」
私は毎朝散歩をしている。今日は暖かく晴れてるけど、空の色が白っぽく薄い水色。そして遠くの方の景色がぼんやりしている。おや、眼鏡の度数が合わなくなったのかな?眼鏡を外して右手で閉じた目をこする。そして改めて眼鏡をかけ直して景色を眺めるが変わらない。足元に咲いている黄色いフキノトウの花はハッキリと見えるんだけどね。おかしいなー。
辺りを見渡すと、そろそろ田んぼに水が張られるようで、田んぼの隅の土が丁寧に整えられている。田んぼに水を張ったキラキラとした光景を想像しながら歩く。
その時、ふと思い出した。そうか、この空は確か「春霞」。言葉はとても美しいけどその正体は、上昇気流で巻き上がった空気中の塵やホコリや水蒸気、花粉、黄砂など残念だけど美しいとは言い難い物質だったような……
でもぼんやりとした見通しの悪い、なんとなくすっきりしないこの空気でも、霞(かすみ)という言葉を使うと、どこか幻想的なイメージになる。そして霧やもやは「かかる、たちこめる」と言うのに、霞は「たなびく」と言う。普段使わない言葉(たなびく)に私の好奇心がとてもくすぐられる。さらに夜になると霞(かすみ)は朧(おぼろ)に呼び名が変わる。あ――猛烈に素敵すぎる。
花粉や黄砂で外出が辛い時期だったけど、言葉一つで散歩の足取りが軽くなった。
「かすみたなびく~♪ルンルンルン♪」
そいえば朧月夜(おぼろづきよ)って曲?童謡?もあったような……家に帰ったら調べてみよう‼
単純な思考のおかげで、今年の春は少々鼻水が垂れても、このぼんやりとした空をにやけた顔で見上げ、ウキウキな気分で過ごせそうだ。
※ただしこの効力は来年も続くかは不明。
私だけに効く「春の魔法の言葉」 星空 花菜女 @20250317
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