文学、そこに込められた人間の人生の全て、想いや葛藤、大衆受けを狙うわけでもなく、ひたすら自らの苦しみを吐き出すような叫びとも言える文章、そんなものを愛していたが故に、体の良いストーリーで飾られ、安安と「天才」と崇められることに対する、どうしようもないやるせなさを感じた主人公。
決して商業作家の作品に魂がこもっていないわけではなく、しかし見栄えを整えるために加工されたそれは、もはや生身の生々しいそれではなく、独自で磨かれた表現技法に「表現不一致」なんて名称がつけられ普遍化されることにすら寂しさを覚えてしまう。
文学がもつ価値とは、言葉にした瞬間に偽りになる、形容できない生身のそれなのかもしれない、と考えさせられました。