第10話 記憶の聖域での対決と、封印されていた真実

夜明け前。

王都の地下深く、誰にも知られていない「記憶の聖域」への扉が静かに開かれた。


葵は、胸に浮かぶあたたかな記憶の断片に導かれ、ゆっくりと歩みを進める。

そこにいたのは、黒衣をまとったユリウス――いや、彼の中に眠るもう一つの人格ユノスだった。


「やっと来たね、アオイ。君を待っていた」


「ユリウス……戻ってきて。あなたは、そんな冷たい人じゃない」


「違うよ。僕は、君を愛しすぎた。手に入れたくて壊したくなった。それが僕の本質だ。ならば、君が僕を拒むなら、――消えてもらう」


ユノスの魔力が空間を歪め、聖域が暗黒に染まっていく。

だが、葵の胸に輝く“記憶の石”が淡い光を放ち、空間に一筋の光を取り戻す。


 


光の中、幼い二人の姿が映し出される。


――かつて、この世界にいた聖女アオイと、村の少年ユリウス。

ユリウスは孤児でありながら、村人に混じって聖域の記憶を守る役目を担っていた。


「アオイ、僕は君を守る。たとえ記憶が消えても、来世でまた君を見つける」


「約束だよ。何度生まれ変わっても、また友達になって――それ以上になれるといいなって、思う」


それは“輪廻りんねの誓い”――

魂が転生を繰り返しても、必ず再会するという契約。


だがその直後、黒の教団が村を襲い、聖女は封印され、ユリウスの記憶は強制的に断たれた。

さらに実験により、彼の中に生まれた《ユノス》が本来の魂を封じ込めてしまったのだった。


 




「君は優しかった。大切な人を守るために、何度でも傷つこうとした。僕がそれを……嘲笑っていた」


《ユノス》が苦しげに胸を押さえる。


「だから僕は、君に戻るべきだ。――これ以上、彼女を傷つけないために」


記憶の聖域が再び輝きはじめ、ユリウスの瞳から赤い光が抜け、金の色が戻る。

同時に、長く抑え込まれていた彼の本心が溢れた。


「葵……ずっと、君に謝りたかった。君を守ると誓ったのに、こんな姿で再会して……」


葵は静かに手を差し出す。


「ようやく、本当のあなたに会えた気がするよ。遅くなんかない。これから一緒に歩いていけばいい」


ユリウスはその手を取り、涙をこぼす。


「……ありがとう。君が光だった。いつだって」


 




こうしてユリウスは人格を取り戻し、《ユノス》の残滓ざんしも聖域に吸収されて静かに消えた。

だが、その奥で新たな記憶の扉が揺れていた――


そこには、葵自身の“転生の秘密”と、黒の教団の真の目的が隠されていた。

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