2025w40 集落の真ん中の海
突然やってきたような秋、今年はキノコが豊作でしょうか。
全国で収穫作業に勤しむ皆様、次の植え付けなどされている皆様、本当にいつもありがとうございます。
ご近所で草引きに入っている土地は古くは苗代で、少し前までは畑だったため、菊芋やら里芋やらがわんさか生えています。他にもミョウガとか、ニラとか。
特にそれらを引き継いだわけではないけれど、あそこにも長芋生えてますねーなんて土地の持ち主の方と話しながら、雑草に飲み込まれないように周囲をサッパリさせたり、適当に切り戻したり、一応収穫もできるようにはしています。
以前、こちらのエピソードでも少し書きました。
◉下ノ畑二居リマス
https://kakuyomu.jp/works/16818622172629050517/episodes/16818622176002824793
何故そんなことを始めたかって、日常的に通る道端の土地が草ボウボウで、いよいよという感じになってきて、道沿いにめちゃくちゃゴミが落ちているのが気になったからです。
どちらかというと、そのゴミを落とされている状況が気になったんですね。なんだか治安の悪化を感じたというか。それがきっかけです。
それで話を聞いたら、もう畑はようやらんし市に草刈りを頼むとえらい高いという話で、そんならやりましょうかとお声がけし、その代わりに土地の中で植生調査をやらせてくださいとお願いしました。
実際に始めてからは、植物だけでなく、そこに集まってくる昆虫や爬虫類、鳥や動物(区域内で動物を見かけたことはまだない)を網羅的に眺めています。
なぜそんなことをしているかと言うと、単純に素の状態のこの土地に、どれくらいの生き物が居るんだろうか、ということに興味があるからです。
目的の作物を育てている畑では、それ以外の植物や害になる生き物は基本的に排除されます。それが悪いと言うわけではなく、人為的な手入れがかなり入っているので環境条件が大きく違い、生息している生物種も数も異なります。
結構な広さの土地で、セイタカアワダチソウの大海原のようになっていました。
アレロパシー効果(他感作用)と言って、他の植物の生理現象に作用して生育を阻害したり、逆に促したりする化学物質を分泌する植物がいますが、セイタカアワダチソウの場合は、根から出す化学物質が他の植物の種の発芽を抑制します。そうして邪魔者のいない土の中で、根をぐんぐん伸ばして大帝国を築き上げちゃいます。
植物は人間以上に修復機能に優れていて、草刈機で頭を吹っ飛ばすとセイタカアワダチソウの場合は1本の切り口から4〜5本は生えてくるので、より濃密な森が出来上がります。わずかな隙間にすでに発芽していた他の植物が居ても、より影になるので育ちにくくなります。
そこで根ごとセイタカアワダチソウを抜いてやれば、光が差し今まで眠っていた種も目を覚まします。根をごっそり抜いて土を動かせば微生物叢も一旦崩れますから、新たな生態系が構築されます。それを観察しているわけです。
まあ、自分の頭より上にムカデがいるようなことも多々ありましたけれど。
道沿いや人家に近いあたりは夏前に抜いたので、イネ科の植物やホシアサガオ、マメアサガオなんかが旺盛に繁茂しています。そしてこの時期に厄介なのはアレチヌスビトハギ。北米からの帰化植物で、最近は近所の土地という土地を盗まれているかのようにあちこちに大きな個体を見かけます。
アレチヌスビトハギってなんだかファンキーな名前ですが、要はひっつき虫型の種を作るやつです。三角の袋が三つ四つと連なって鞘のようになった種が、気づいたら衣類にへばり付いていた経験はございませんでしょうか?
こやつも上から攻めるとひっつき虫だらけになるので、横から下から種のあまりない株元を握って引き抜けば、こちらの勝ちです。もう少し早めに対処できれば良かったけれど、思いの外、種がつき始めるのが早く、せめて種が熟す前にと抜いております。
一方で、今まで気配のなかった彼岸花や、キク科のヨメナのような秋を思わせる花が出てきているのも楽しいです。ちなみにヨメナって秋の季語だそうですね。「ヨメ」ってネズミの古語なのだとか。美味しい若芽をノネズミが食べるんだそうです。
中央付近はわざと夏の終わりを待ってからセイタカアワダチソウの森を抜きました。夏場と違って一斉に草がわんさか生えてくることはありませんが、やっぱり地中に残留したセイタカアワダチソウの根からの復活が最も早いので、日本が砂漠化することは暫くないなーとむしろ安心しております。
広々と光が入る空間を作ったので、眠っていた種が目を覚まし、今秋や来春に生えてくる草花がどんな野郎共なのか、今から楽しみにしています。
耕作放棄地や遊休地は一般に悪しきものとして扱われますが、私は宅地開発が進む街の中にある生物多様性の最後のフロンティア、そして天然のシードバンクだと考えているわけです。私はそういう場所を守りたいし、まず大人にそういった環境の面白さを知ってもらいたい。
何故って、そういう場所で遊んで育ち、失われてゆく絶望を感じてきたからです。
大人が解ってないと、知らない間に子供の前から姿を消していきます。この辺りはすぐにコンクリートで塗り固められて家が建ちます。私の子供の頃は団地作りや道の敷設を中心に開発が進んで、土地の人たちはほとんど強制的に土地を取り上げられていきましたし、そういう時代だから、仕方がないって諦めムードに満ちていました。
大人たちが作るその空気の中では、子供は無力なものです。
とまあそんな風に思っていても、これって1円にもなりませんから、どうやって食ってくの? という話になりますね。協力者を得ること自体も難しい。
そんな部分も含めて、このエピソードも前回話題にした自主企画、人の心を動かす力を秘めているかもしれないヒューマンドラマのネタにならないだろうか、なんて思っています。
この話って、色んな立場、背景、考え方の人が絡みそうじゃないですか。
ここに書いたことは、あくまで一例として、「やりたいが世間一般にお金にならない」ことと、どう向き合っていくかというテーマ。
もちろんお金持ちの余興的な話だと、ある意味でありきたりでツマラナイので、お金も肩書きも人脈も(もちろん異能も)ない人が如何にして、というのが理想です。
ビジネスに昇華するならどんな形があるだろうか、という思考実験も良いですね。
誰か書いてくれないかな。
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