第十六舞  にやにや

 ある日、目が覚めた時、そこはまるで自分の部屋ではないかのようだった。

「え? これ……」

 起きた自分の隣に居るのは、ミライさん。

(え、アタシ、ミライさんの部屋に入ったっけ?――いや、違う)

 辺りを見た。

「ちゃんとアタシの部屋じゃん。じゃあなんで居るの?」

 一緒に寝ていたギウちゃん、ピブちゃん、エンちゃん、フーちゃんは、小さく丸まって寝息を立てている。

 其々それぞれ、翼をたたんでいる。エンちゃんに寄り掛かっているフーちゃんは立って眠っているのに近い姿勢だけど、目は閉じている。

(ふふ、本当にこのコたちは可愛い)


「不用心だよ」

「え?」

 一緒に朝ご飯を作っている。そんな時に言われた。

「カギが掛かってなかったから、入って中から掛けて、一緒に寝たの。重瑠えるちゃん、もう寝てたから」

(カギ、掛けてなかったかなぁ……)

「もう一度言うけどね」

 と、ミライさんは、オタマを持ったまま顔を近付けてきた。

重瑠えるちゃん、普段から女のままでしょ、男の時でも割と可愛い顔してて、なのにちょっと抜けてんだから」

「ご、ごめん……」

「弱味とか危ないところを見せるのは私にだけにして」

「う、うん」

(ん?)

 いや、いやいやいや。今ちょっと顔を見せらんないかも。



「――なんてことがあってさ」

 昼の本部の食堂で、リトナっちと話していた。

 その話を受けて、リトナっちはニヤニヤしている。

「ミライさんとそうなったのねー、なるほどねー」

「何その意味深な顔」

 おぼんの横ではフーちゃんとギウちゃんが喧嘩けんかをしていたから、それを手で止めながらそう聞いた。

 すると。

「や、幸せそうで何よりだなーって」

「そ……そぉお?」

 確かに、顔がほころぶ。これが幸せの絶頂? 落とし穴がないといいけど!

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