第5話

「ミャコ。今日までずっと言えなくてゴメン。

 ミャコは俺のこと、ただの兄としか

 思ってなかったかもしれないけど、

 俺は会った時からお前のこと大好きだったよ。」


抱きしめる時に投げ捨ててしまったらしく、

床に転がる、少しよれた花束を拾い上げる。

桜の花と、ピンクのミヤコワスレが

綺麗に束ねられている。


「俺の、4月1日の誕生花は、桜。

 花言葉は『私を忘れないで。』

 

 少し離れちゃうけど、俺のこと忘れないで、

 また追いかけてくれる?」


何が起こったのかわからなくて

目の前に差し出された花束を、震える手で受け取る。


「わ、私の、ミヤコワスレが…お別れのお花…」


「あはは。

 実はね、都瑚みやこの瑚は、

 珊瑚のピンクの意味にもなるんだよ。


 だから、ミャコのミヤコワスレも、

 きっとピンクのミヤコワスレだよ。

 花言葉は『また逢う日まで、しばしの別れ。』


 ね、大丈夫。別れじゃないよ。

 また逢えるから。」


私を置いて、先に行ってしまう彼にふて腐れていたけど、

私の花が、再会を意味する花になった。

桜ちゃんめっちゃキザな奴ー!と笑いながらも、

私はその花束を優しく抱きしめた。


「やっと笑ってくれた、ミャコ。

 お前のキラキラした笑顔、大好きだよ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る