第3話

卒業式。

在校生として出席。

おうちゃんは卒業生代表として挨拶をする。

その姿にすすり泣く桜ちゃんママ。と、なぜか私のお母さん。



「学年の中で1番年下で1番小さくて可愛かったのに、

 あんなに馬鹿みたいにでっかくなっちゃって…。」


「見た目はたくましくなったけど、

 桜ちゃん昔からずっと変わらず優しくていい子だよ…。

 なんなら文武両道、イケメン君にパワーアップしちゃって…。」


卒業式が終わっても、なぜか2人は肩を抱き合って泣いていた。


都瑚みやこは寂しくないの?」


顔面ぐちゅぐちゅのお母さんに問われる。

そういえば涙も出ないし、寂しくもない。

むしろ、




「なーんでそんなにふくれっ面してんだよ。」


「べっつにー?」


荷物をまとめる桜ちゃんを横目に、私はアルバムを見る。

ただでさえ物が少なくてすっきりしていた桜ちゃんの部屋は、

数個の段ボールに収まって、すっかり殺風景になってしまった。

あと数日で桜ちゃんは、県外で1人暮らしを始めるのだ。


「ミャーコ。あとはそのアルバム詰めたら終わりなんだけどー?」


「え。このアルバム持ってくの?

 こういうのって実家に置きッパにするもんじゃない?」


「いいの。俺の大切な思い出だから。」


ふーん?と、さらにパラパラとめくると、私の1歳上の子達と

楽しくはしゃいでいる桜ちゃんが沢山写っている。

そして、隅っこにはだいたい私も見え隠れしている。


小学6年生の私と、中学の学ラン来ている桜ちゃん。

セーラー服を着た私と、高校のブレザーを着た桜ちゃん。


たった1日の違いが、

この大きな差を生んで、歪な写真を作っている。

そしてまた、

ブレザーを着た私と、茶髪で私服を着た桜ちゃんの

写真が追加されることになるのか。


茶髪になるかどうかは、知らんけど。


「あ。これ、ミヤコワスレの花壇で撮った写真。」


私が小学校入学式の後、桜ちゃんと合流して

桜ちゃんと同じ1年生じゃないことに

泣きながら怒ってた写真。


「この時のミャコ、可愛かったんだよなあ。」


どんなになだめても、泣きわめいてさー!と笑う桜ちゃん。

恥かしくてアルバムを光の速さで閉じる。


「なっ、ななななな…?!可愛い、だと…!?」


桜助おうすけくんと一緒じゃないならヤダー!って笑」


小さい時の話すぎて、泣きわめいたことしか覚えてなかったけど、

私そんなこと言って騒いでたのか…。


「けど。小学校にミヤコワスレの花咲いてて、

 ミャコのお母さんが、都瑚みやこのお花綺麗に咲いてるよ!

 みんなで一緒に写真撮ろう!って言ったら泣き止んでさー」


キク科の紫色の少し小さな、

真ん中が黄色くてとても可愛いお花。

私の、4月2日の誕生花で、私の大好きなお花。

そして花言葉は


「別れ。短い恋。」


昔と変わらない、私の大好きなキラキラの笑顔を見つめながら

小さく呟いた。

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