第14話 ある日聞こえてきた声


あの日から数ヶ月が過ぎ私はこのお社での生活に慣れてきた頃、微かに声が聞こえてきた。


「……声?」


私は立ち上がりその声に導かれるようにお社から出て行き森の方へと歩みを進めた。なんとか歩き続ければその声は段々はっきりと聞こえ始め私は気がつけば走り出した。


《お姉様がどうか……どうか土地神様の元で幸せに暮らしていますように……》


「この声…やっぱり黎那……!」


もう少しで森の外に出ようとした時、私の腕は後ろへと引っ張られ私の足は止まった。そこに居たのは瑞華様だった。


「瑞華……様?」


「あぁ良かった。一体どこに行こうとしていたんだい?」


「森の外から……妹の声が……」


私がそう告げれば瑞華様は少し悩んだ表情を浮かべたあとすぐに笑みを浮かべればそっと私の目を隠してきた。


「駄目だよ紫苑。もうそんな声は聞かなくていい」


「瑞華様……?あの……でも妹で……」


「紫苑…君は私の花嫁なんだ。もう外とは関わってはいけない。」


「で……ですが……」


「全く……紫苑今はもうおやすみ。次に起きた時はきっともう外の事を忘れている筈だよ」


そう告げてきた瑞華様の声はとても優しくほんの僅かに花の香りが辺りに漂った。私はそのまま意識を手放す瞬間に見えた瑞華様の瞳は妖しく光りながら森の先を見つめていた。


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