第三話 幼馴染の彼氏に"大好き"と言ってしまった


 ある日曜日……。


 「……ぐかっ!……ん…」


 私、伊織夕葉いおりゆうはは自分の寝室で目が覚めた。

 あー、よく寝たな。

 私は口元から垂れていた涎を拭いた…ん?いま何時だ?そういや今日はトーカと最寄り駅に9時に待ち合わせてデートの予定……。


 「ん?」


 私は時計を見た。

 そして絶句した

 今、9時10分だった


◇◇◇


 「お」

 「ごめん待たせた!!!!」


 私は全力で準備して10時までに最寄り駅へ走ってきた。


 「何かあったの?」


 トーカは質問してきた。


 「あ、あー……いや、ただの寝坊……」

 「そうだったのか…」

 「本当に申し訳ないです……ごめんなさい」


 私は頭を下げて謝った。


 「良かったー」

 「!」


 私が頭を下げた後のトーカの第一声はこの一言だった


 「お前に何かあったのかと思ってたからさ、良かったよ」


 そう笑顔でトーカは言った。


 「……」


 私は思わず心臓の音がなってしまっていた。

 何でこんな優しいんだよ……。

  

 「まぁ、とは言え……」


 プニィ。


 「ふぇっ!?」

 「少しはお仕置きな?」


 トーカは私の両頬を摘んで引っ張った。

 


◇◇◇

 

 ガタンゴトン。


 私達は電車に乗って目的地へと向かっていた


 「少しは手加減してくださいよ」

 「いやー、罰だから多少の事は多目に見てくれよ。つーかなんで敬語なん?」

 「せめてもの謝罪の気持ちです」


 私は丁寧にトーカと接していた


 「いや普通でいいよ。なんか気持ち悪いから」

 「分かった……じゃあ、元に戻す」


 トーカがそう言うのだから私は元に戻して話した。


 「ユウって"ませガキ"な割にこう言う所はしっかり筋を通そうとするよな」

 「誰が"ませガキ"?」


 私はジトめをしながら頬を膨らませた


 「あーいや……可愛いって意味よ?」

 「そんな補う感じの"可愛い"で私がいつもみたいにすぐ顔を赤くするとでも?」


 ジト目を続けながら私はトーカと話す。

 そうわちゃわちゃ会話しながら私達はある目的地へと向かった。



◇◇◇


 ザワザワ……。

 目的地はある県にある◯◯市の市民祭りのお祭り会場だ。そこは〇〇市にある広い市民公園で行われていた。

 色々な『じゃがバター』、『フランクフルト』、『焼きそば』、『プライドポテト』、『チュロス』、『ぶどう飴』など沢山の出店が並んでいた。


 「やっぱ活気づいてんなー」


 トーカは早速買ったたこ焼きを食べながら言った。


 「まぁ、お祭りはどこもそんなもんでしょ」

 

 私はトーカが持ってる容器に入ったたこ焼きを爪楊枝で取り出して食べた。


 「美味しっ!」


 私は思わず笑顔になる。

 私の弱点として、美味しいものには目がないんだよね……。


 「……」


 その時、トーカは私の顔を見ていた。


◇◇◇


 私達は色々と店を周り食べたり遊んだりして祭り会場から大分離れた人気がない広場にある長椅子に座っていた。


 「どれも美味しかったよ!!」


 私はご機嫌だった。


 「特に焼き鳥は何度食べても飽きないよ!!りんご飴もあの硬さの中にある柔らかさとか、チョコバナナの色々なデコレーションとかやっぱお祭りって感じがして楽しい!」

 「……ぷふっ!」

 「!」


 その時、トーカが突如笑い出した


 「あはははっ!!……ユウはやっぱお祭りが好きだよね」

 「……まぁ、否定しないけど……お祭りと言うかお祭りの時に出てくる出店の食べ物が好きなのかな……」

 「ほーー?やっぱ食いしん坊だな」


 そうクスりとトーカはニヤけた。


 「だ、だって美味しいんだもん…」


 私は思わずトーカから顔を背けた。


 「……そこ"も"可愛いとこなんだけどな」


 トーカは言った。


 「は、はぁ?またその場しのぎの可愛いで……」

 「いや、今のは本気で思ったこと」

 「!」

 「笑ってるお前は可愛い。つーか俺の目に映るお前は全てが可愛いよ?」


 そうニコっと笑って言われた……。


 「……もうっ……何なんだよ…」


 私は顔が熱くなるのを感じた

 この前の放課後や帰り道の時だって、アイツは自分が赤くなりながらも私に正直の気持ちをぶつけてくる……。

 本当にこっちが反応に困るって言うのにさ……。


 「何だろうな……」


 私は呟いた。


 「ん?どうした?」

 「人の気持ちってやっぱ周りの環境に影響されるけどその気持ちを"一緒にいる人"によって上書き出来るんだなって」

 「……つまり?」

 「ほら、祭りとか人が騒がしい所に来るとみんなが大体は楽しそうにしてるから自分も楽しい……と言うかテンションが上がってくるじゃん?」

 「だな」

 「"私の言う環境"はそういうコミュニティに限らずさ、"ただ1人"の仲良い人といるだけでも大分気持ちは変わるんだなって」

 「……」

 「トーカと私は付き合ってるじゃん?」

 「おう」

 「そう……それでさ……私はトーカと一緒にいるだけでとても楽しいんだ」

 「……え?」

 「だ、だからさ……どんなに辛い環境であっても、私は自分のことを分かってくれる人が1人でも周りにいたらその環境が苦であっても乗り越えられるっ思ってるんだ」

 「」

 「それに辛いことが実際あってもその、トーカと何か適当にくっちゃべったことがあったら、もうトーカのことで頭がいっぱいになるんだよな……」


 私はなんか自分で話しときながら体が熱くなるのを感じた。やばっ……最近熱くなってばっかだよな……つーか最近、私の理屈がポエムっぽくないな……。

 それもこれもトーカがいるからなんだよ?


 「ユウ"ちゃん"」

 「!!」


 突如、トーカは私と2人きりの時にしか呼ばない愛称で私の名前を呼んできた。


 「なんか今回は腑に落ちたわ」


 その時、トーカが笑った。


 「そ、そうでしょ?」


 珍しく質問がなかったな……


 「ユウはやっぱ可愛いよなー」

 「!!…だ、だから何が……本日3回目の可愛いなんだけど?」

 「色々理屈つけて語ってるのに実際は素直に"嬉しい"……いや、"大好き"って言おうとしてくれていることが可愛いし、俺も大好き」

 「……」


 カアァァァァァ!!!

 あ、あれ……。

 やば、トーカの顔を見れない。

 な、何だろこの気持ち……。

 気持ちが込み上げてくる……嬉しい…じゃなくて……、


 「こんにゃろが……」

 「ん?ユウ?」


 大好きって気持ちがさぁ!!!!!!


 「ねぇっ!!」


 ガバッ


 「うおっ!?」


 私は思わずトーカに抱きついていた


 「お、おい……」

 「そうだよ!!!私もトーカが大好きなんだよ!!だから……」


 スッ。

 私はトーカの顔に自分の顔を近づけた。


 チュっ。


 私はトーカの唇にじぶんの唇を重ねていた。

 幸い人がいなかったので何とかなった。

 でも本当に……。

 私はトーカと一緒にいるだけでこれからどんなことがあろうと絶対乗り越えられる…そんな"確信"がある。だから…、


 「大好きだよ」


 私はまた言った。トーカの目を見て。

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