第43話 ショーちん!!
秋村翔吉を救出した特務清掃員一行は、
一時撤退すべく地上への帰路を辿っていた。
「ダンジョンに入って約八時間か……もはや遮るデブルスはいない。
行きの半分の時間と労力で脱出できるだろう」
「そういやショーちん、よくここまでライドポリッシャーで来られたな?」
ライド・ポリッシャーの座席にぐったりと身を預けていた翔吉は、
ハッと気を取り直した。
「そうでした!まったくの偶然なんスけど、
ここまで近道できるルートを見つけたんス!」
「そりゃいい。その近道はまだ使えるのかな?」
「ライポリのコンパス機能に記録させてますんで……あった!」
翔吉は行く先を指差す。
「ちょうどこの先っス!」
「行ってみよう」
ライポリで先導しながら翔吉は記憶を辿りつつ話す。
「一年前……つってもオレにはついさっきなんスけど……
明大キャンパス跡地の一画に巨大なガス穴が開いたんで、
調査がてらそっから地下に降りたんス」
「そのガス穴が今向かってる近道って訳か」
「ハイ。でもなんか途中が不気味な感じで……
見ちゃいけないもんを見ちまった気がして、引き返そうと思ったんス」
「そこにデブルス核が現れて作業になったってワケか」
「ハイ……そしたら、その日に限ってバッテリーの減りがスゲエ早くて。
動けなくなって、そっからの記憶が全然なくて……
だからなんで一年も生きてたのかとか、 白デブルスが何なのかとか、
全然わからないんス……すいません」
しょんぼりする翔吉。
響司は思案気に顎に手を当てた。
「謎は深まるばかり、だね……」
「まァ、その話は後だ。今はとにかく地上に出ンぞ」
「そーだね。向ヶ丘2型がまた暴れ出す前に……って」
「……」
「どうしました?響司さん」
不意に立ち止まる響司に浄は尋ねた。
「この隙間から風が漏れているんだが……少々気になってね」
「何がです?」
「強いて言うなら『匂い』かな。ハッ!!」
ドゴッ!!
響司が裂帛の気合いと共に電磁モップを振るうと、
岩壁に走った亀裂は風圧によって、ぽかりと大きな口を開けた。
「アキラくん、さっきの火球を出せるかな?」
「は~い」
アキラが両掌を合わせると、そこからルームランプ大の火球が生まれ、
謎の洞穴内部を明々と照らし出した。
そこに広がるのは異様な空間だった。
***
朽ちたコンクリートと錆びた鉄骨の山…
まるで先ほど向ヶ丘2型が納まっていた空間をそのまま
二十畳ほどに縮めたように見える。
一画はサーバールーム、そのまた奥は平たい引き出しがズラリと並んだ
無数のキャビネットが並んでいる。
「なんだァ……ここ」
「研究室っぽいスね?」
「ホントだ~僕ん家に似てるかも!」
「あ~!じゃあここって響司さんが探してる……」
「『清掃庁登戸研究所データ集積所』!ここだよ、私が求めていたのは!」
響司は周囲を見回した後、カワイイAIに命じた。
「ガルーダ、何度もすまない。もう一度博士と繋げるかな?」
『 了解 お気になさらず 』
バチン!
ガルーダのカメラアイが緑から赤に変わる。
『おお!おお!おおおおお……!!』
ガルーダの視界をハッキングした博士はすさまじい勢いで部屋中を飛び回った。
そして何やらガルーダ本体からケーブルと端子を伸ばし、機器と繋ぎ始める。
『素晴らしい!!二十年前に焼失したと諦められていたデータや
資料が山盛りじゃないか!これで『で号兵器』…
そして登戸研究所がどのような研究をしていたかが明らかになる!
君たち!他のカワイイAIも貸してください!
ありったけのデータを根こそぎ回収したいので!!』
浄と鐵也はマメ公とシバタローをデータ回収に協力させた。
浄・鐵也・響司・アキラ・翔吉の五人もデータの一部に目を通したが、
まったく意味が分からなかった。
無理もない…日本が世界を牽引するデブルス解析と清掃技術の
二十年前にして最先端の研究報告なのだ。
特別な異能を持つとはいえ研究者でもない、いち清掃員には内容が高度すぎる。
「あ!…ってことは」
浄が何事か思いつく。
「向ヶ丘2型の弱点なんかも分かるんじゃない?」
『弱点?』
博士が会話に加わり、響司が応える。
「ええ。向ヶ丘2型には我々の清掃力が効かないのです」
『まさか……どのように?』
「どのようにって…なんか表面で弾かれている感じがあったなァ」
『表面で……』
博士はそれきり口をつぐんだ。
これは博士が高度な思考をハイスピードで脳内に駆け巡らせている証拠なのだ。
アキラにだけは分かっていた。
『……心当たりがある。少し時間をくれないか?
データもすべて抽出できたようだし、さっそく解析させてもらうよ』
「お願いします」
博士からの接続が切れ、三体のカワイイAIは通常に戻る。
「よーし。なんかトントン拍子で進んでるね。脱出しよっか」
「そう上手く行きゃいいがなァ…」
「心配性だなぁ~鐵ちゃんは」
「まあ『好事魔多し』と言うからね。気を引き締めようじゃないか」
「センパイ方!急ぎましょう!」
その時、申し合わせたように不気味な地響きが鳴る。
ゴゥンゴゥンゴゥン…
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
四方八方からデブルス核の触手と化した
パイプラインや鉄骨の束が突き出した!!各自素早くそれを
「あっぶね!!」
「向ヶ丘2型の野郎ォ…またぞろ元気になって来やがったな」
「響司さん!ショーちんとアキラくんを先に外へ!」
「任せたまえ。さあ二人とも、こっちだ!」
「はわわ」
浄と鐵也がデブルス触手を手分けして電磁モップで刈ってゆく。
慌てたアキラが何かに足を取られて転倒した。
「えぇ…なにこれ?」
真っ黒く腐食した鉄骨がアキラの右足首に巻き付いている。
「いたた…取れないよ~」
「大丈夫っスからね!今取ってあげますから…」
翔吉は掌に清掃力を集め、デブルス触手の拘束を弱める。
その隙に響司はアキラを助け出した。
「よくやった!急ぎたまえショーちん!」
「ハイ!……!!」
翔吉は気づいた。
アキラに肩を貸す響司の死角に、黒い毒素を滴らせた
極太のデブルス触手群が迫っていることに!!
「あぶないッ!!」
「!!」
翔吉は重い体から最後の力を振り絞り、
響司とアキラを襲いくる触手から突き飛ばした!
夥しい鉄骨の群れが翔吉の上に殺到する!!
「「ショーちん!!」」
響司とアキラの悲痛な叫びが響く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます