第7話 日常に忍び寄る影
はい、回想終わり!
俺は冒険者ギルドについた。扉を開いて中に入る。なんだ、なんだ?何やら人溜まりが、ロビーの右の壁際に出来ていて騒がさしい。
近づいてみようとするが、人で引っかかり前に進まず原因が分からない。
近くにいた、モモカンヘヤーの男に話しかける。
「すんません、これってなんですか?」
「ん?あんちゃん、最近この町に来たのか?ヒャハ〜ッ、なるほどね」
ヒャハ〜ッ!?そんな見た目道理な笑い方することあるんだ。
「こないだ喧嘩で、設置していた魔テレビが壊れたんだぜ。それで、それが修理されて戻ってきて今、設置されているんだぜ」
「ほーん」
「見たのなら後にしたほうがいいぜ。設置が終わるのは、時間がかかる」
「……へ〜。じゃ、また来るわ!」
手をふって、モモカンヘヤーと別れる。人々が魔テレビの設置をみているからなのか、受け付けにいるのは少ない。
ニコニコしている受付嬢に話しかけてくる。
「おはようございます!依頼を受けますか?」
「おはようございます、今日も綺麗ですね☆」
「あはは、ありがとうございます」
すげぇや、完璧に流された。
「どんな依頼が受けれますか?」
「Fランクですと……こちらになります」
引き出しからだした紙をこちらに差し出す。それを覗いてみる。
◆――――――――――◆
[修道院のお手伝い]
詳細…………現地での説明
場所…………ハルゴーグ街東
マスヘルミカ教会
応募条件……特になし
報酬…………1000ゴールド
◆――――――――――◆
◆――――――――――◆
[荷物運び]
詳細…………現地での説明
場所…………ハルゴーグ街北
ハルゴーグ商店
応募条件……特になし
報酬…………2500ゴールド
◆――――――――――◆
以上、二つでした。
やはり、Fランクだと雑用が多いらしい。あぁ、薬草採集と、討伐系はないみたいだね。
俺は気になったので、受付嬢のお姉さんに聞いてみた。
採集系は、昔はやってたらしいんだけど、下手くそが多すぎて苦情がきたらしい。
あと、Fランクだから討伐系が受けられないのではなく、15歳未満の子供は一人では受けられない。怪我の恐れとか、なんとか。規則だってさ。
俺はいま12歳の子供だからな、しょうがないといえばしょうがない。
まぁ、依頼の話だ。どっちにするか選ぼう。
う〜ん……あ?そっか!そうだな!い〜や、やはりぼく…ゲフンゲフン、俺は天才なのかも知れないな!
受付嬢に紙を渡して、両方に指をさす。
ざわぁざわ、ざわぁざわ。
それを見ていた冒険者たちが騒いでいる。大丈夫さ!ギャラリーのことなんて気にしない☆
「僕がやります……!僕が乗ります!」
「了解です、受け付け完了しました!」
エヴァが流された!?
「両方とも、午前の部と午後の部がありますが、どちらがいいですか?」
「修道院を午前で、荷物運びを午後で!」
「わかりました。それでは、荷物運びは14時より!修道院は残り十分後にスタートです!」
「……わぁお」
アキレス腱伸ばしーー!
手首足首ーー!
「地図って貸し出しありますか?」
「はい!こちらに」
手渡しで木の地図をもらう。かなり丈夫にできている。なんども壊した奴がいるのか?
えー、今がここだから〜……こう行けばいいのかな?……うん!オッケー。
大丈夫だ。問題ない。
屈伸ーー!
「……じゃ、行ってきます」
「はーい、また来てくださいね〜」
次の一瞬の内に、受付嬢の視界からアルスは突風と共に消え去った――走り去っていった。
―――――。
アルスが去ったあとの冒険者ギルド、それは、まぁ大変賑わっていた。
ロビーの壁に設置された巨大テレビに流れるニュースを見る者、新しくこの町に来たばかりの者。内蔵したレストランで昼間っから飲んでいるもの。昼食を取る者。はたまたそれら全てか。
しかし、この町の古参冒険者たちの会話はひとつのことで盛り上がっている。
「まさか、二つとも取ってキャンセルしないガキがいるとは!」
「ガハハハッ、そうだな!」
笑って酒を飲んでいる男女に、近くにいた剣士の風貌をした若い人間が話しかける。
「あの〜それって、どういうことですか?」
「……ん?もしかして、最近この町に来たのか?ガハハハッ、だったら俺が教えてやろう!この町ではな?ガキには、始めに[修道院のお手伝い]と[荷物運び]の二つのどっかを選ばせるんだ」
「はいはい」
「それで、普通に片方を選んだら別に良いんだけどな?たまーに、田舎で負け知らずで調子に乗っているガキとか、英雄思考のガキとかは『両方で☆』とかいうから、時間制限を設けることで失敗させて、失敗しても大丈夫な時に失敗させていくんだ」
「へ〜、それはいい制度ですね」
「だよな!俺もそう思う」
辺りの騒音に紛れ込ますようにガハハハッ、と笑う男に剣士は疑問に思ったことを口にだす。
「でも、失敗したら子供がへこみません?」
「……なぁ、あんた」
男の顔が真面目な顔になる。
「そんなやつに、冒険者を続ける勇気があると思うか?」
「……ないですね!愚問でした」
「ガハハハッ、分かったらいいんだよ!」
ジョッキで酒をがぶ飲みする男、それを見てにやにやしている女。そこに質問する剣士。
「あれ?でも、成功したらどうなるんですか」
「そうなんだよ!この町で若いころに成功したことがあるのはあのSランクギルドリーダー[名医]だけなんだよ」
「え、あの!?」
「おうよ![名医]はこの町出身でな?今度の祭りの時に来るんだってさ!……話がズレたな、俺たちが騒いでるのは、あいつが成功したらもしかしたら将来的にSランクなるんじゃないかな、って話だよ」
「マジっすか!」
「ただクリアはむずいぞ。どちらにも『鬼の教官』と呼ばれ恐れられるオババとオジジがいるからな」
あちこちから『俺、オババにEしかもらったことない』『私はオジジにF〜』『聞いて驚くなよ!?俺はDだーー!』と聞こえてくる。最後に関しては、拍手が上がるほど凄いことらしい。
「だから、まぁ、酒の肴にはするけど期待せずに待っておくべきぞ」
「ありがとうございます!参考になりました」
「気持ちがいい返事だなー!あっ、そうだお前、魔スマホって持ってるか?」
「はい、まぁ一応」
「オッケー、魔インを開いてQRコードを出してとけよ。……おーいみんな」
人が一斉にこちらを向く。
「こいつが魔スマホで魔インを開いてるぞー!」
「!?」
剣士があたふたしている。この町、古参の冒険者たちは、ぽかーんとなったあとニヤッとわらう。全員がなにか、ゴソゴソしてとある物をだす。
魔スマホだ。そして画面は魔インの友達追加だ。
「え?まさか……」
「お前さっき独り言で『まじで魔インの友達0なんだけど……』って呟いてただろ?可哀想だと思ってな、俺たちが友達になってやろう」
「なんか上から目線!なんですか、これ!」
ジリジリ、体格のいい冒険者たちが寄ってくる。
「さっき言ってたあの[名医]が始めた、ぼっちのための文化だ」
「いやな文化!」
「まあまあ、よいではないか」
「いやーーー(嫌ではない叫び)!」
この日は平和だった。
――――。
「ぶるっ」
「おかえりなさい(笑)ご飯にする?夕食にする?それとも、ゆ・う・げ?」
「……ただいま(笑)、どれも同じじゃない?」
依頼を終えて疲れて、玄関を開けるとエルフとサイズが小さくなったユニがいた。顔の彫りが濃すぎる……ジョ◯ョ立ちをしている。それでエプロンを着ているのだから、面白い。
コートを脱ぎ、玄関の壁に掛けておく。魔法陣【
エプロンを脱いでたたみながらカイが笑う。
「手を洗ってうがいしてから来てね」
「ぶるっぶるっ」
「はーい」
洗面台へ向かう。蛇口を捻り水を出し、手を濡らした後、水流を止める。手のひらに石鹸をつけて泡立てて、隅から隅まで綺麗に流す。
う〜ん!綺麗になった!
はっ、違わないけども違う!俺は何に馴染んでるんだ……!
しっかりと手をタオルで拭いたあと、リビングまで走る。衛生的〜!食器を手で並べるカイと魔法で浮かして並べるユニの後ろ姿を見つける。
「いや待って!?俺らなんで馴染ん――」
「アルスくん!!!!」
「――はい!」
「ご飯だよ、座りなさい。今日はハンバーグだよ」
「わーい!楽しみだー」
席に座って手を合わせてる。これは、いただきますっていうやつだ。
へへっ、じゃあ頂きま………す……。
顔だ、紫の顔ハンバーグだ。なんか、煙出してるし「あぁ……ぎゃあああ」って悲鳴上げてる。プスプスいってない!?いや、待てよ。こんな見た目でも美味しのかも知れない!
カイとユニの方を見る。ダラダラ汗をかき、目を合わせてくれない。おい、ユニなんで小さくなるんだ。俺の目をみろ、目を。
持っていたスプーンを静かに置く。
「……俺を呪い殺そうとしてる?」
「……うふふふふっ」
「え?これって錬金術で生み出したものだったりする?料理だとすると感性狂ってるよ」
「料理は錬金術と似ているらしいよ」
「俺が言ってるのは違う、そうじゃない」
まぁ、食べるか……。食材に感謝!
「あ〜むっ、(もぐもぐタイム)………ぅぐぅげっるぅぎぇ」
泡を吹いて倒れた。
―――。
夜遅く、星が空で輝いている。アルスはカイの豪邸の庭で素振りをしている。
何時間も素振りをしているのか、滝のように汗が全身をぬらしいている。木刀を振るたびに落ちる汗が、地面の芝生を湿らす。それが、彼らの肝臓数値をバクアゲしている。
「……っ、……っ、……へっ、……あ゙〜疲れた。もう終わるか」
木刀を【異空間】にしまってタオルで汗を拭く。カイ邸のリビングに移動する。そこで、だるーとニュースを見ている風呂上がりのカイに話しかける。
「風呂って空いてる?あっ、今日の食費はここに置いとくからな」
『――回のスタ―――ドから――十年、もう――あの惨事が――』
おぼろげだが、テレビの音も聞こえる。しかし、気にも止めなかった。
「うん、空いてるよ。食費は気にしないでいいよ」
「そうはいかないからな、じゃっバイビー」
『――れについては、気をつ――しかないですね。特にあの――デッドの森な――はやばいで―からね』
そういってアルスは風呂へ向かっていった。
この後、惨事が起きる。
『アルス・ワード、意識不明の重体及び、両腕の欠損……死に至るリスク特大』
アルス、??????まで 残り3日
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