第2話 修行

















 あの「森の中気絶事件」から1年が経った。あいも変わらず、森は魔物たちでいっぱいだ。転生して1年経った僕が今何しているかだって?僕は今森の中の訓練所にいる。


「では、アルス今日は魔法の授業と座学を並行しておこなうのじゃ」

「は〜い!」


そう、この世界にはみんな大好きな魔法があるのだ。これがまぁ面白い!


「まずは、昨日同様魔力を感じる所からじゃ。これが一番難しい。なぜなら、これには種族が関係してくるからじゃな。どうしてわかるかな、アルス?」


そう言って、じいちゃんは訓練所を覆うぐらいの大きな魔法陣を描きながら聞いてきた。


「うん。神様が与えてくれる加護が違うからでしょ?」

「そうじゃな。次は加護による種族ごとの違いを説明するぞ?」

「バッチコイや〜」

「ばっち?」



気にしないで。



じいちゃんによると、種族ごとの違いはこんな感じらしい



獣人、身体能力が非常に高い


エルフ、魔力が強い


竜人、竜化という強い力が使える


魔族、個体によって変わる


人間、バランスが取れている




 …というものだ。人口でいうと竜人が他と比べると少ないが、大体同じらしい。って、強みしか分からなかったんだけど。智識偏りすぎじゃない?もっとなんか、種族の文化とかさぁない?


「あとは、神族という種族もおったんじゃが…今はもうおらんのじゃ」


 あっ!説明したそうにこっちをみてる老人がいる!…でもなんかイヤだな。なんでだろう?でも、知りたいな。


「どうして〜?」

「それは、かつてそいつらは強くての、全方向に喧嘩を売りまくったんじゃよ?まぁ強くてすべての種族が力を合わせても無理だったんじゃな。んで、一方的な戦いで神族がの…」


 え?なになに?神様にやられたとか?「やりすぎだよ、君たち。喰らえ神様ビーム」とかが起こったってこと?


「飽きて、異次元をつくってそこに入ったんじゃとさ。」


 まじかよ、神族。異次元作っちゃたよ。


「…っと話がそれたな。人間が魔力を感じづらいのは、バランスが取れている故に難しいということじゃ。種族故じゃからここに貴族も平民も関係がないんじゃ。属性は遺伝的要素が大きいがの」


 魔法陣が描き終わり、満足そうにじいちゃんはそういった。咳払いをして話を続ける。


「まぁ、10歳の時に属性が決まり、それに付随する魔法の言葉…通称[魔言]も決めるんじゃ。これは決めたら二度と変えられん。じゃが、属性魔法の発動には魔言は必要不可欠じゃ。じゃから慎重に考える必要があるんじゃよ。そして属性外の魔法は基本的に使えない。まぁ、今儂がやったように魔法陣を描くという手もあるがな」


 そう言うと、ふぉふぉふぉと笑い出す。髭を右手で触りながら地面に座る。


「魔法陣よりも魔言を使ったほうが強いのじゃ、どうしてわかるかな、アルスよ」

「魔言にはその魔法を強くする効果があるからでしょ?」

「うむ、では実際に見てみせてあげよう」


 そういうと、後ろからクマの唸り声が聞こえた。急いで振り返るとそこには、赤い毛をしたクマがいた。あっ!レッドベアーだ!口からは涎が垂れており、目がガンギまっている。…やばくね?これ?


 僕が死を覚悟しているとクマの爪が振るって目の前まで迫る。…しかし爪が僕に触れることはなかった。なぜならクマが吹き飛ばされ木にもたれ掛かっていたからだ。


「これはレッド…なんじゃたっけ?」

「ベアーだよ。じいちゃん…」


 クマを吹き飛ばしたのはじいちゃんのようだ。その老体から考えられないほどの力を出している。じいちゃんはしばらく考えるとこう口にする。


「せっかくじゃ、これをアルスの教材にしよう」 

「ふぇ!?」


 さっすがじいちゃん。愛護団体に怒られそうなことを平然と口にする。老人が魔法陣を空中に描きながら僕の前に立つ。


「いいか、アルス。これが魔法陣で描いた【身体強化】と【超回復】じゃ」


 そうして、立ち上がり再び近づいていたクマを殴り飛ばす。クマはさっきよりも速く飛び木にぶつかり、気絶する。再起不能なケガに見えた。しかし、クマは立ち上がる。


「どんなケガでもすぐ治す【超回復】の魔法陣の効果じゃ。地面に描いてあるやつじゃよ」


 そういって地面を足で、コンコンと叩く。…なんでそんなものを描く必要があるんですかね!?僕の修行だよね!?そして右腕をまわしだす。そうしている間にも起きてきたクマは突進してきている


「そうしてこれが魔言を使った場合じゃ」


 じいちゃんは目をつぶり、深く息をすると目を開き唱えた



「『たぎれ』【身体強化】」



瞬間、辺りの空気が変わった。


身体が重く息をするのが苦しい。


それを、引き起こした老人からは黄金の魔力が漂っている



 ……ハハッ、これが魔言!すげぇ!



「そして、しぶとい相手と戦う時は一撃で仕留めるのじゃよ」


 そうして繰り出された右ストレートはクマの身体を木っ端微塵にした。額に何かが付く。バラバラになった破片だった。……えぐぅ!


 光景はそれが当たり前かのように老人は…


「さぁ、授業の続きじゃ」


 というのだった。


 強いな、じいちゃん。魔言葉やばい。そんな感じで思考停止になりそうなアルス8歳。


 その心には、自分もこの人を超えたい、絶対に超えてやる、という純粋で強烈な夢を抱いた。





【魔法陣】

本来、持たない属性魔法を使うために必要なもの。しかし、属性魔法とは別に適正が必要。持っている属性の魔法陣を使うことも可能だが、非効率であるから誰も使わない。他にも様々な制約がある。











現在、アルス8歳、旅に出るまであと4年









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