第3話 授業の続き





 クマが襲ってくてじいちゃんのパンチで木っ端微塵にされた後、アルスとじいちゃんは体育座りをしていた。

 ただ座っているのではなく、焚き火にかけた鍋を見ている。グツグツと音をたてて、香ばしい香りを辺りにまき散らしている。


「さて、できたかの〜」


 老人は立ち上がり、自分と少年の皿にできたスープを取り分けると皿とスプーンを渡してくる。


「確か…これはブルーベアースープだっけ?さっき襲ってきたレッドベアーの希少だよね。食べると魔力量が上がるっていうやつ。」

「そうじゃな、たくさん食べるんじゃよ、ふぉふぉふぉ」

「うん、大地の恵みに感謝を」


 苦笑しながらスープを啜る。


 なぜこうなったかを説明しよう。さっきレッドベアーが襲ってきたじゃんか、それの後に僕らは昼になってたことに気づいたんだ。


 それで「ご飯を狩りにいくか」ってことになったんだ。…にしても記憶を取り戻してこら、ご飯を狩りにいくという言葉に少し引っかかる。

 パワーワードすぎない?


 それで森を歩いているとブルーベアーがいたんだ。でも、気づいたら手に刀を持ったじいちゃんが首を切り落としてたんだ。速すぎて見えなかった。にして刀カッケー!



 それでそれを解体したあとに、スープにして今に至る。


「さて授業の続きじゃ、今魔力を感じる訓練はできんから、魔言について説明するぞい」

「お願いします!」


二人、訓練所でスープを食べながら礼しあう。


「うむ、属性魔法は10歳になった時に使えるようになるから魔言も同じタイミングで決めるんじゃ。魔言はの特定の効果を倍にするもので、決めたらもう変えられないし、無理なことは決められない。長くするのも無理じゃな」

「どういうのが無理なの?」


そう、ここが疑問なんだ。魔言を聞いたときは、そんなの長くすればいいじゃんと思ったんだけど、長くしてる人、いないんだよ(知らんけど)。


「二単語以上がだめじゃ、イメージに合わないのもだめ、あとは属性に関係ないのとか?」

「例えば?」


 おかわりを注ぎながら聞く


「儂の場合は『滾れ』なんじゃが、これは自分の属性[金]に関係している。イメージなんじゃが魔法を使い、地面から生やす時に土が滾る感じなんじゃ。だから、滾れにしたんじゃ。これが『弱まれ』とかだったら無理じゃ」


話した後に思い出したように付け足す


「あぁ、でも神族の連中は別じゃ。あいつらはなんでもつけれる」

「そうなの?」

「うむ、例えば[火]があるじゃろ?あれは燃えているから、『消えろ』なんて魔言は無理じゃ。消えるからのぉ。しかしあいつらが『消えろ』とつけたらどうなると思う?そうすると当たると相手が消えるぐらいの火力がでるんじゃ。しかも人間はつけてもできないのに」

「ふ〜ん」

「故にあいつらは神に愛された種族、神族なんじゃ」


話が終わり。スープがなくなった。2人で昼食を片付ける。鍋を洗い、皿を洗い、家に片付けにはいる。そうして修行の再開だ。よっしゃ〜、属性魔法が使えるようになるまであと2年か、それまでに魔力を見つけて完璧に扱えるようにならないとな。がんばるぞ〜!












1週間後

「まじで魔力わから〜ん」





















2週間後

「待って……もう……やめ…て…し……ぬ…」

























3週間後

アルスは物言わぬ屍となった














◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






















みなさん、どうもアルスです。あれから4週間が経過し魔力を感じられるようになりました。他のひとは1年ほどかかるそうです。才能があると思いましたか?違いますよ、死にかけたんです。


あれは1週間が経ったころ全く魔力が感じられず、焦っていました。するとじいちゃんがね?



「アルスや、そんなに速く魔力を感じたいのならいい方法があるぞ?」

「まじで!?」



といったんです。僕は迷わずそれを選びました。地獄が始まるとも知らずに。













アルスが3週間でクッキングされた詳細↓





まずは訓練所に敷かれた【超回復】の魔法陣。あれを使います。

そして魔法陣の上で魔物にアルスを襲わせます。

戦わせてアルスを命の危機まで追い詰めます。

どんな致命傷も一瞬で回復します。

それを何度も繰り返します。

すると死なないために身体が頑張って強くなろうとするので魔力を感じます。





はい!完成!



はい。死ぬ、めっちゃ痛い。もういやだ。しかし、これを選んだのは自分のため文句は言えない。結果も出てるしね。





ということで魔力操作なのですが、簡単だった。不思議と始めから自分の一部かのように感じられた。


【身体強化】の魔法陣も覚えて使えるようになった。使ってみても無色だった。

 じいちゃんいわく、10歳の時に決まる属性魔法によって色が変わるみたいだ。じいちゃんは「[金]だから黄金に変わるんじゃ、かっこいいじゃろ?」といって胸をはっていた。

 自分は一体何色になるんだろう?とワクワクしながら、今日も強くなるために魔物との実戦訓練の日々です。


これからもこの家で過ごしていくためには、強くならないとご飯を狩るのではなく、狩られてしまいますからね。……異世界まじ怖い!























 当時は、これからも、こんな幸せがずっとしばらく続くと思ってた。




 でも続くことはなかった。





















 ―――物語は動き出す

         出してしまう












【身体強化】

無属性魔法のひとつ。属性魔法を覚える前でも使える数少ない魔法。10歳までは無色だが、属性魔法を覚えるとその属性を主張する色に変化する。











アルス旅に出るまで3年11ヶ月















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る