星は堕ちて道となる

クワイエット

第一章 旅立ちの日

第1話 始まり





深刻な問題として、★と♡を貰えるとモチベーションが上がります!



以下本編

――――――――――――――――









 今振り返ると、いろんなことがあった。


 死があるのか分からないけど、死ぬ前にこれまでのこと――仲間のことを書いておこうと思った。


 ある意味、遺言というか、なんというか……日記みたいなものだ。


 後世で見ているであろう諸君!……まぁ、そんなに気にしないでほしい。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












『王道とは決まった道のことじゃない。偉大な王が通った道だから、王道なんだよ』

――【堕星だせい】アルス・ワードより

 








 頭に衝撃が走り、視界が回る。身体ごと回転し、地面で何度もバウンドする。


「ぐへっ!」


 手に握っていた木刀は、締め付ける僕の手から逃げたし宙に舞う。


 その後、全身が痛いような、痛いのは確かなんだが、痛みよりもなんだが身体がふわふわしている。

 不思議な感覚だ。


 空を見上げて、はっ、とする。



 僕、転生したかも知れません



 森の中の訓練所で頭から血を流して、大の字に倒れ込みながらそう思う。

 いや、転生とは違うかもしれない。思い出したほうが正しいのかもしれない。………同じだな


(あ〜、まじで全然、脳が回らないな)


「アルス〜すまん力が入りすぎたかもしれない」


 遠くにいた老人が大きな声で謝りながら近づいてくる。今にも泣き出しそうな表情だ


「すまんの〜すまんの〜」


「じいちゃん、謝らないでよ。修行をつけてくれっていったのは僕だよ」


 上半身をゆったりと起こしながら、軽く苦笑する。

 この老人は、僕のじいちゃん。立派な白い髭がトレンドマークだ。あと、未だに筋肉隆々なところだろう。


「そうじゃが…」


「だから気にしないで」


 うん、悪いのは、訓練を頼んでおいて、ぼけ〜としていたのは僕だし。

 アホかと思うね。

 だから謝らないで欲しい。こっちが申し訳なくなる。

 とはいえ何で今思い出したんだ?

…う〜ん?まじで前世(仮)あんまり覚えてないんだけど。


(いや、待てよ。なんか思い出しそうな気がしてきたような気が……)


「やっぱりどこかにケガを!?」


 僕の思考を遮るように、じいちゃんが大声を上げる。


「ふえ?」


 後から聞いた話、どうやら、頭や身体をクネクネしていたらしい。


 クネクネしてるってなんだよ。おかしいだろが。



「アルズゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」



 まぁ、打ちどころが悪かったらしい。


 視界が朦朧とする。立派な白い髭をした老人が泣いているのが映る。


 ハハッ、じいちゃん「ス」が「ズ」になってるや。そんな、俯瞰したような気分で、どうでもいいことを思いつつ僕は気を失った。




―――――――――。




 目が覚めるとベットの上だった。



「知らない天井だ…」



 お約束の呪文を唱えて上半身を起こす。どうやら、木造の家で暖炉が火が心地よい音を鳴らしている。


 あぁ、ここは家か。


 じいちゃんは…いないな。目が覚めたことを、報告しようと思っていたが無理なようだ。


 体を起そうにもダルメだし、思考も未だにはっきりとしていない。

 つまり、何もすることができないということだ。


 ……う〜ん暇だし、頭のトレーニングがてら今の状況を整理しておこう。


 わかりやすいように、Q &A 形式で表現すると、以下の通りだ。


 Q.転生した、もしくは思い出した?


 恐らく思い出したが正しいたろう。今までのアルスの記憶もあるからね。


 Q.人格は?


 ただの記憶として前世がある感じ?だから今世の『アルス・ワード』としての人格だ。

 多少なりとも影響があると思うが、今はあまり前世を覚えていないので、関係がないだろう。


などなど。


 そんなことを考えること、はや1時間近く。

 静かにドアが開いた。そこから出てきたのは、血まみれの白い何か…ではなく返り血と見られるもので髭が染まったじいちゃんだった。


 起きている自分を見ると、すぐに駆け寄りながら、話しかけてくる。


「ア、アルスさっきは――」


「先に言っとくけど、謝るのはなしだから」


「んじゃぁ!?」


 予想的中。


 やっぱり謝るつもりだったんだ



「何度もいうけど、悪いのは僕だから、もうこの話終わりね」


「じゃ、じゃがっ」


「……終わりでしょ?」


 納得してなさそうなじいちゃんを、今できるだけも剣幕で威嚇する。


 精々、微風程度だろうけど


「うむ…わかったのじゃ…。ところでそのお腹はすいとらんか?」


 感情がぐるぐるなったのだろう。乙女化現象を起こして、もじもじしながらじいちゃんはそういった。

 たしかに、目が覚めてから何も食べてないな。



「そうだね、お腹がすいたね」


「ふぉふぉふぉ、そんなことがあろうかと、ご飯を狩ってきたのじゃ。さあ、食べようかの〜」



 そう言って今にもスキップしそうなくらい嬉しそうにご飯を取りに部屋から出ていた。

 背後にお花が飛んでるよ。っていうか、やっぱ「狩る」なんだ。


 まぁ、そうかこの世界だもんな。そう言って僕は窓の方をみる。

 ジャングルみたいな森の中で、キメラみたいな魔物とでかいヘビみたいな魔物が戦っている。

 うぉ、ここまで衝撃波が飛んできたんだけど。……怖いな。


「……うるさいの〜」


 いつの間にか部屋に入ってきていた老人がそう、不満げに呟く。


 じいちゃんはゆっくり歩み出し、怪獣大乱闘か映る窓を開ける。

 そこから、いつの間にか手でフォークを2本持ち上げていた。それを、黄金の魔力覆ったかと思うと、突風が巻き起こる。


 突然のことに僕は思わず、目をつぶる。目を開けた頃には、じいちゃんが窓をしめた後だった。



「アルスや、ご飯じゃよ」



 そんな声とともに、衝撃で虚になっていた意識が、現実に戻る。お盆には湯気が立ち昇るスープに、チーズが乗ったおかゆを乗せてある。

 美味そう〜!



「ありがとう!じゃあ、大地の恵みに感謝を」


「感謝じゃな」



 そう言ってベットの上で上半身だけを起こしながら食べ始める。小屋が外の衝撃波でまた揺れる。

 至福の時間だが、横目でちらっと窓を覗く。


 そこに怪獣大乱闘はなかった。


 あるのは、目の前に刺さったフォークにびびって逃げている怪獣だけだった。


 目線も戻し、ご飯を食べる。


 …うん、異世界転生(仮)をしたけど外に一人で出るのは無理かもしれない。

 旅なんで恐ろしすぎる。

 怖すぎるもん。ここで普通に暮らして親孝行…いや、じいちゃん孝行をするんだ。


 そう決意してご飯を口に運ぶ。


 口の中に広がるうまみ。

 やべっまじ、うめぇよ!うま!


 そう思って、飲み込んだ。

















◆◆◆◆◆◆◆◆

















 その夜、不思議な夢を見た。

 暗い夜空に溶けていくような感覚がした。

 


「お宅の―子さんは、もう――――」



 誰かが話し合っている。


 白い服を着た人物と男女の二組だ。白い服を着た人物から告げられた言葉に女は崩れ込み泣き、男は啞然としている。


 なにが起こっているのか分からなかった。


 視界は朦朧とし、体から管のようなチューブが伸びているのが見える。


 手を伸ばそうにも体が動かない。


 しばらく、静寂が続いた。


 ピッピッピッ。機械の音だけが響く。



「―めんね」

「ご―んな―い」



 いつの間にか近づいていていた、2人の男女は耳元でそう呟く。顔を向けようともしても動かない。


 そんな俺の様子を見ると、さらに泣きそうな声で続けた。



「ごめんね。…もしね、次の人生があれば―――」



 部屋に、ピーーッと音が響いた。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











「はっ……はぁはぁ」



 勢いよく、飛び起きる。


 目から涙が溢れていた。


 ……?夢をみていた気がする。


 夢にしてはリアルだった。


 ――つまり、あれは……


「……あんな感じなら、別に、思い出せなくても良かったかな」

 

 小さく呟いた。

 背中や全身が汗でびしゃりとぬれている。窓に目をやると、まだ夜遅くだった。

 ベットに横になり、寝ようとするが眠れない。

 …しょうがない、散歩にでもいくか。頭を冷やしたい。





「うひょ〜、さむ」



 縮み込みながら、外に出て歩く。夜風が頬に触れてそこが体温が下がっているのが感じられる。

 今、僕は一人で森の中にある小坂を登っている。


 僕はさっき見たことで、胸がモヤモヤする。


 の最後の言葉を聞き取れなかったのだ。


 あれを、思い出したい。

 しかし、思い出したくない。

 思い出すと、自分の中で何が変わってしまうようか気がした。


(もやもやするな)


 一人で考えていると、辿り着く。

 そこは花が沢山咲いている崖の上だった。ここでは、僕の住む小屋やこの広大な森全体を一望することができる場所だ。


 そして、僕の昔からのお気に入りの場所でもある。悩み事、辛い事、何かあれば、いつもここにくる。


 近くにあった切り株に腰掛ける。その際に口から白い息が漏れ出る。



「スゥ〜ハァ〜、うん。やっぱりここはいいね」



 不意に空を見上げた。その時だった。


 空一面の流れ星が流れていた。


 いや…これは…



「――流星群だ」



 『綺麗』



 続けて出た言葉だった。


 しかし、心の底から出た言葉だった。



 手を上にあげ、握る。


 掴むことはできなかった。



 世界は広いのかもしれない。

 世界にはこれほど素晴らしい光景がたくさんあるのだろうか?


 溢れ出す、似たような言葉が頭の中を完全に支配する。


 ……一人旅は無理でも、家族と一緒ならいいかもしれない。



 白い息を吐き出す。



 心のモヤモヤは消えていた。















 現在、アルス7歳 旅まであと5年

















―――――――――――――――――









 第一章のクライマックスの伏線はここにある。

        by ネタバレ作者



  ☆×3

  ♡×話数


をください!この簡単な作業で作者はどこまでも、世界を描いていけます。












 次のページに行く前にですよ?



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