第43話 戦士の力

「ふおおおおおおおぉぉぉ……こ、こんなものを、俺なんかが使っていいのか?」


「もちろんです、皆さんに使ってもらってますから」


 タク製武具魔法付与てんこ盛りを身に着けたガンヒルは激震した。

 

「圧倒的な防御力を持ちながらまるで肌に吸い付くようで全く邪魔にならない……」


「肌に直接触れる素材はフィット感を大事にしています、そして可動範囲を邪魔しない立体構造で作られた鎧。これらによってまるで裸で戦っているかのようで中位魔法でさえ完璧に防ぐ防御力、これは間違いなく逸品です」


「武器も一見無骨で野暮ったいのに、実際に持つとその取り回しの良さと何より溢れる力と全てを切り裂く切れ味、手に吸い付くようだ!」


「戦士が自らの魂を預ける以前の大剣とデザインは寄せて作っています。持ちては一人ひとりしっかりとオーダーメイドで作り、そして切れ味などには魔法付与が力を貸しています。さらにこの鞘に入れればメンテナンス面もサポート、自動で刃の修復と研ぎまで行ってくれます」


 戦士たちが二人のやり取りを聞き武具の性能を改めて理解して感嘆の声をあげる。

 すでに魔物との戦いでその性能を嫌と言うほど体感し、改めて細かなかゆいところに手が届く性能を知り、すでに戦士たちはタクのもたらした改革に反論は持ち合わせていなかった。


 タクたちはそれから砦と外部をつなぐ街道の整備や周囲の整備に手を出していく。

 戦士たちは整えられた環境で鍛錬、休息、実践と快適なサイクルを回すことが出来るようになり、一部の実力者に偏っていたことで起きていた不均衡も解消されていく。上の目線にビクビクして媚びへつらうような状態から、お互いをリスペクトし高め合う仲間としての関係性が生み出されていく。

 不思議なもので今までのだらしない生活から身を清め清潔な服装に身を包むと、言葉遣いや所作までも整っていくようで、段々と規律有る集団へと戦士たちは変貌していくのだった。


「タク殿、我らの制服を作っていただけないだろうか?」


「制服、いいですね!! 直ぐ作りましょう!」


 全員の意見を聞きながらデザイン、揃いの制服を作成する。

 平時の時は制服に身を包み、そして戦いのときには鎧を身にまとう。

 もちろん着替えのことも考慮してデザイン作成されていく。


「おお……壮観だね」


「皆様かっこいいですよ!」


「ありがとうタク殿、エリシュ殿、ドラフ殿……ワシ達は再び過去の英霊たちに恥じぬようにこの地を守り抜いていく……眼の曇っていたワシを引っ叩いてくれたこと、そして若き戦士たちを育てる場を作ってくれたこと、感謝する。言葉では語り尽くせぬが、我が魂より、皆に感謝を伝えたい」


 一同に並ぶ戦士たちが、一揃えの美しい制服に身を包み、剣を掲げる。

 皆の眼にはこれからの未来への戦いへの強い決意の炎が宿っている。


「……ところで、僕達、ここに何しに来たんだっけ?」


「御三方は物資補給と砦の補修にいらしたのでは?」


「あーーーー!! 物資補給!! 戻らないと!

 仕事の締め切りとっくに過ぎてるよね!」


 もともとの仕事をすっかり忘れてタクたちはこの砦に長居をしてしまっていた。

 それからバタバタと準備をしてまともな挨拶もできないままにタクたちは街へと戻った。結果、メッチャクチャ怒られた。魔物にやられたと死亡扱いになる寸前だった。ある程度の危険がある依頼であったため期日遅れによるペナルティはないものの、遅れるとわかった時点で連絡をせずに依頼の遅延をしたせいで奉仕活動を課せられた。その奉仕活動が街の小さな依頼、例えば故障した物の修理や家の屋根の修理などであったため、タクは久しぶりに自分の体を使ったモノづくりに嬉々として没頭するのであった。


「やっぱり作ったもので人が喜んでくれるのは、嬉しいね」


「楽しそうでしたね」


「ドラフも腕を上げたね、色々と任せても大丈夫だね」


「ありがとうございます!! 初心に戻ってのモノづくり、非常に勉強になりました!」


「さて、エリシュ。一度戻ろうか」


「そうですか、他の者達はこのままこちらに?」


「そうだね、こっちの調査は続けてもらおう」


「……どうかされたのですか師匠?」


「いや、ちょっとこっちもそんなに変わらないなーって思ったのと、やっぱり人のためにゆったりモノづくりしてるのが性に合ってるんだなぁってね。

 未知の材料もいいけど、今あるものでもっとなにか出来ないのか、そこに向き合いたくなってしまった」


「……わかります」


「この地を巡れば、きっと国と国の争いというくだらないものに巻き込まれますからね」


「うん。そう思う。そういうのは、いいや」


「素材に関しては部下たちに収集させますので」


「ということで、帰ろっか」


「わかりました!」


 こうしてタクたちはの世界から一旦へと戻ることになる。


 タク達が帰路の準備をしている頃リッスの魔物の穴に作られた大要塞で異変が起きる。


「次から次へと湧いてくるな、これほどの攻勢は何年ぶりだ!?」


「30年前の大攻勢以来だと思います!」


 穴からは巨大な魔物が這い出てくる、次から次へと、しかし要塞を守る戦士たちは設置された魔術弾射出装置で薙ぎ払うように魔物を打倒していく。


「素材を自動的に回収できるのはいいな! 魔石だけでも一財産築けるぞ!」


「タク殿に感謝ですな! 新兵も落ち着いてな、撃てば当たる!」


「はいっ!!」


 苦し紛れに放たれた魔物の魔法も防壁が完璧に防いでくれる、敵の攻撃は完全に遮断し、そしてこちらの攻撃は一方的に敵を殲滅していく。


【ククク、ついに魔神ワルドエンド様が復活されたぞ、まずは人間を血祭りにってグオッ! バカな! 我が障壁を貫く攻撃だと!? 魔列強筆頭のカネイ様の体に傷をつけ、ぐはっ!! くっ、なんなのだ!!】


「でかいのが来たぞ、射線を集中しろ! クロスファイアポイントにしてやれ!!」


【グウオオオアアア!! いい加減にしろ!! 極限魔法、核炎熱地獄メルトインフェルノ!!】


 魔神の手のひらから万物全てを崩壊させる極大な魔法が発射される、しかし、周囲の防壁はそれらの魔力を全て吸収し魔法弾のエネルギーへと貯蔵していく。


【な、な、なんじゃこりゃーーーー!!!】


 こうして、魔神の復活、それに伴う大氾濫、そして12柱の世界を揺るがす魔神の一柱は蜂の巣となって消滅した。

 外の世界は、救われたのだ。      めでたしめでたし。

 



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クラフトぐるい 穴の空いた靴下 @yabemodoki

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