第13話(IFルート②) 繰り返される過ち

 続いて②のあかりに子供が出来なかったルートです(温泉旅館で交わった一日では妊娠しなかったパターン)。※但し途中までの文章は①と同一です


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 俺はやってしまった––––と後悔をしながら家の中に入ると、まなみが出迎えてくれた。


「ただいま……」

『おかえり、和兄ぃ。何もなかった…って事は無さそうだね?その様子だと』


 俺はまなみに対して包み隠さず旅館であった事を伝えた。ただ…流石にあかりとの相性の良さを思い出してしまった事に関しては、伝えるに伝えられなかった––––。


『そっか…やっぱりそうなっちゃったんだね。今回は私が持ち掛けた事だし、和兄ぃは気にしなくていいから』

「す、すまん…」

『でも…次は無いからね?分かった時点で即離婚だから。例えがお姉ちゃんだとしても』


 まなみは約束通り、今回の過ちに関しては水に流してくれた。ただあくまでも今回だけであって、万が一にも同じ事を繰り返してしまったら…まなみは本当に容赦しないだろう。


 ただもし、あかりにまた求められたとしたら…俺は非情に徹する事が出来るだろうか。


 正直俺にとっては––––逆効果だった。身体を重ねてしまった事で、昔の気持ちも蘇ってしまった。こんな事なら無理にでもあの時あかりを止めるべきだった…と後悔しても遅い。


 まなみも俺とあかりの相性なんてそこまで考えはしなかったんだろう。それは当たり前だ、普通は理性を凌駕しそうな程の相性なんて滅多にあるものじゃないだろうし。


 あかりもあの日一日で俺への想いを忘れる、と言っていたが実際どうなのか?願わくば、あかりの想いが消化されている事を祈りたい–––。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 あかりと温泉旅館に行ってから、一ヶ月が過ぎた。幸か不幸か、あの時の行為であかりは妊娠には至らなかった。


 あかりからその連絡があった際には、俺もまなみも内心ホッとしていた。特にまなみは第二子の出産を控えているのだから、余計な心労は避けなければならない。にも関わらず、幼馴染の誘いに流されてしまった俺は父親として失格なのかもしれない…。

 

 まなみの出産予定日まではおよそ三ヶ月。安定期に入っているとは言え、性交渉を無理に行なって負担をかけたくは無い。これまで通り俺が我慢すればいいだけだ。


 そんな中、あかりとの行為をした事で思いもかけず発散する事が出来たと考えるようにしていた––––が、それは甘い考えだった。


 一度シてしまった事で、あの甘美な快楽を味わいたいという欲望が湧いて来てしまう。一時凌ぎとして風俗に行く事も頭に過ったが、どうにか自家発電で処理しながらなんとか抑え込んでいた––––。


◆◇

(side:あかり)

 結局、和樹との子供は出来なかった。私はあの一晩で出来なかったら諦める、とは言ったものの…和樹と久しぶりに肌を合わせた瞬間、初めて交わった時を思い出した。


 和樹を男として認識し、ドキドキを感じた瞬間。思えばあれは気持ちの問題だけでなく、和樹とだからあれほど気持ち良いと感じられたんだろう。


 先輩と一度シた時は、その呆気なさに拍子抜けしてしまった。大学生の間に一人だけお付き合いした同学年の男性とも何度か行為こそあったものの…和樹とシた時のような強い興奮と身体が燃え上がるような感覚は無かった。


 最低限身体は感じるものの、大した反応を示さない私を見て事務的に行為を受け入れているように思われたんだろう。その彼との付き合いは半年ほどで終わってしまった。


 それ以降誰かに身体を許す事はなかった。そしてもう叶わないと思っていた、和樹と再び交わってしまった––––。


 お互い獣のように貪り合ったあの夜を、どうしても忘れる事が出来なかった。どうにかまなみとの約束を守らなければ、という想いとあずみの事を思い出して欲情を抑え込もうとしたが、果たしていつまで保つか––––。


 そんなある日。会社でシステムのメンテナンスが入るため、午後は仕事が無くなって早く帰れる事になった。


 気分転換に駅前でランチをし、少し買い物をしてから家に帰る事にした。家の近くまで歩くと、偶然和樹がそこにいたのだ。


「あかり?今日は仕事じゃないのか?」

『システムのメンテナンスで午後からはお休みになったの。和樹は今日お休みなの?』

「ああ、あずみの迎えに行くまで時間があるからちょっとブラブラしてたんだ」


 …時計を見ると、まだ十三時半。幼稚園のお迎えに行くとすれば、十六時過ぎくらいになるはず––––。


 この時私の心と身体は我慢の限界を迎えていたのかもしれない。ごく自然に、和樹を家に誘ってしまっていた。


『ねぇ、和樹。時間があるなら私の部屋、すぐそこだからお茶でも飲んで行かない?』

「い、いや…気持ちはありがたいけど俺は––––」

『ダメ?折角だから私もあずみちゃんのお迎え行こうと思うんだけど…それでも?』

「…わ、分かったよ」


 あずみをダシにして和樹を部屋に連れ込んでしまう。そこからは簡単だった。どうやら和樹も色々と我慢の限界だったらしく、胸を身体に当てたり耳元で囁いたりしただけで私に覆い被さって来た。


 再びあの夜の続きが始まった。一度火がついた気持ちが、こんなに激しく燃え盛る事になるだなんて…。



(まなみ、ごめん––––––もう私も和樹も、止められないかも…)


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※次話に続きます

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