第118話 訓練場

一旦、ギルドマスターと別れ、訓練場に行ったら、不満ぷんぷん状態の冒険者が15人ほど屯っていた。


「あの程度の面子では、ギルドマスターに効果がありませんね。」

カフールさんが「いえ、あの程度の奴らからも舐められるほど、ギルスが現場から離れていて、にらみを利かせられないということです。あれでも、元A級冒険者なのですがね。」

「まあ、確かに。冒険者という暴力集団を纏める重しにはなってなかったようですね。ただ、まあ、ギルドマスターは、元々アタッカー職でしょう。人の気配とかを探るほど、器用には見えませんでしたから、僕に対しての対応、、、いや、立ち姿とかから相手の力量が測れない時点で現役を退いて正解かもしれませんね。

そして、あの程度の面子に舐められる。ある意味、いい機会だったかもしれません。」

とか、軽く雑談していると、でかい魔剣を担いだギルドマスターが出てきた。

小声で「こんなに居るのかよ。これでも、元A級だぞ。俺は、”ぶつぶつ”」


「うわぁ。大人げない。魔剣ですよ。魔剣。訓練用の木剣でも、倒せるでしょうに。」

「完全に、心を折る気ですね。装備ごと。」

「ああ、なるほど。借金持ちを作る気ですか?この後、塩漬け依頼をやらすのに、何を考えているのやら。」


ギルドマスターが大声で、「文句のあるやつから、かかってこい。普段使っている武器を使って全力で来い。雑魚が、身の程を知らせてやる!」


ギルドマスターの近くの奴から、飛びかかっていった。

判断は正しいが、ちょっと実力が足りない。剣をへし折られ、そのまま、数十メートル先の壁にたたきつけられる。


一瞬、冒険者たちの動きが止まったが、「気を抜くなよ。」って、言いながら、自分から、冒険者の方へ飛び込み、武器や装備を壊しながら、壁にたたきつけていく。


「あらら。本当に、大人げない。」

「確かに。ただ、少なくとも、ここにいる面子は、今後、ギルスのことを舐めることは無くなるでしょう。ここにいるものは、C級が最高ランクみたいですし。」


とか言っている間に、冒険者全員が壁に叩きつけられて、呻いている。


「これでは、ギルドマスターへのお仕置きになりませんね。


少し、遊んできますか?」

「では、私が少し揉んできましょう。」

「武器を貸しましょうか?」

「いえ、訓練用の木剣で十分でしょう。ギルスの奴、本当になまっているようですので。」

「じゃあ、行ってらっしゃい。」


カフールさんが訓練場に降りていき、訓練用の木剣を手に取って、ギルドマスターの元へ歩いていく。

「げ、カフール、何でここに出てくる。」

「それでは運動不足でしょう。少し、相手をしていただけますか?なあに、魔法は使いませんよ。安心なさい。」

「ふざけるな。こっちは、お前たちの要望に従って、、、うぉ。」

「隙だらけですよ。一緒に遠征に行ったときに、言ったでしょう?いつでも気を抜くなと。だから、あんなレベルの奴らに舐められるのですよ。」

「わ、お、止めろ。本気で反撃するぞ!」

「あなたの今の本気で、対応できるのですかねぇ?元A級冒険者の”豪剣のギルス”。」


その後は、一方的な様子で、剣をいなしながら、木剣をギルドマスターの体に叩きこむカフールさん。

その様子を見て、壁際で呻いていた冒険者たちも、唖然としてみている。自分が反撃もできずに叩き潰されたギルドマスターに対して、圧倒的な剣技のみで、完封していくカフールさん。

「以前の時も言いましたが、わきが甘い。常に、次の動きを考えながら動きなさいと言っていたでしょう。まったく。修練を続けていないから、あのレベルの奴らに舐められるのですよ。」

「ふざけるな。こっちはデスクワークとかが多いんだよ。これでも、王都のギルドマスターだぞ。」

「私も、執事としての業務をしながらでも、この程度は動けるのですよ。

はい、終わりです。」

うわぁ。ギルドマスターが胴に一撃を貰い、数メートル転がっていった所で、木剣を喉元に突き付ける。容赦がない。

「少しは身体を動かしなさい。力が有り余っていて、無駄な動きが多くなっていますよ。」と、汗一つ掻かずに、木剣を収めながら、こちらに向かってくる。

「くそう。いい加減にしろよ。痛えなぁ。」


カフールさんが、木剣をギルドマスターに投げながら、「では、今度、査定結果と素材の受け取りに参りますので、よろしくお願いします。」と綺麗な礼をしたので、一緒に、訓練場を後にした。

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