第116話 バンガス親方
ギルドマスターが土下座しているところに出くわして、ビビっている職員。
ギルドマスターが、気を取り直したように立ち上がり、「こいつは、サビールという。何か素材を持ち込むと言っていたから、鑑定が出来るこいつを呼んでおいたんだ。」
カフールさんが、「先ほど、打診した件は忘れろと言ったと思いましたが?」
「そんなこと言うなよ。さっきの実力を鑑みると、打診された物は相当のものを持ち込んでるとみるが?」
僕が、「立ち直りが早いですね。やはり、一回ぶんなぐっておきましょうか?」
「やめてくれ、死んでしまう。」
”ノリがいいなぁ”と思いつつ、どうしよかなぁと、カフールさんを見る。
カフールさんも渋々という感じで、「致し方ないでしょう。あれは、ここでしか処理できませんし。
解体場へ案内してください。ここでは、狭すぎます。」
ギルドマスターが、「魔物か?だったら、サビールじゃ無理か?」っと、宣うので、インゴット状にした魔鉄を3つ出して、「これならどうです?」と聞いてみた。
サビールさんが、「これは、純度の高い魔鉄ですね。これならば、一つ大金貨5枚で引き取れますよ。」と言ってきた。
「どこかの貴族が買い集めているとか聞いたのですが、その値段ですか?」
ギルドマスターが「まあ、仕入れ値としては、そんなもんじゃないか?数があれば、もう少し色を付けるが。さっき言っていたように、買い占めによって市場に出回る数が減少していてなぁ。戦争でも起こすつもりかねぇ?」
「では、あと、7つ、全部で10個出しましょう。」
「でしたら、少し色を付けて大金貨52枚でどうでしょうか?」
「わかりました。商業ギルドのカードへ入金しておいてください。」
「では、一旦お預かりします。では、ギルマス、入金手続きに行ってきます。失礼いたします。」と、サビールさんが退出していった。
ギルドマスターが「じゃあ、解体場に移動するか?」と席を立った。
カフールさんが「人払いは頼みますよ。」というと、ギルドマスターが軽い口調で「大丈夫、大丈夫。俺と違って、解体メンバーは口が堅いから。」と不安なことを言っている。
なんか、大丈夫か?
解体場についたら、黙々と作業をしているギルド職員が複数名いた。
ギルドマスターが「親方、ちょっといいか?」と大声を出した。
「なんじゃい。ギルスよ。お、そっちは、カフールさんじゃないかい。久しぶりだなぁ。さっきの冷気は、お前さんのだったか。久しぶりだが、全然衰えてないな。」
「いえいえ、バンガス親方もご健在のようで、何よりです。」
「で、何を持ってきたんだ。」
「ちょっと、内緒で、解体してほしい獲物がありまして。人目のないところへ案内をお願いします。」
「うん?そっちの坊主が持ち込んできたのか?なるほど、これは大物が期待できるな。じゃあ、あっちの奥の解体場に行くか。」
「親方、小僧の実力が判るのか?」
「ギルス、お前はやはり引退して正解じゃな。足運びや体幹のしっかりとしている所、それと比べ魔力を淀みなくE級レベルで保っているのを見れば、実力が判るじゃろうが。どう考えても、動作と魔力量が違いすぎる。力を抑えているのがよくわかるじゃろうが。まったく情けない。こんなんじゃから、近ごろのここへ来る冒険者の素行が悪くなるんじゃ。一回、カフールさんに鍛え直してもらえ。」
僕が、「お手間をかけます。ちょっと大物ですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃ、奥の解体場もそれなりに広い。こっちじゃ。」
足運びや体幹か、これは下手に崩すわけにもいかないし、でも、魔力量を抑えるだけでも、バレるか。まあ、上級者へバレてもあまり困らないけど、バトルジャンキーとかにバレてケンカを売られたら困るけど、加減が難しいなぁ。
案内された解体場は、思ったより広くて、大丈夫そうだ。
カフールさんが、「解体費は、伯爵家で出しますので、丁寧にお願いします。場合によっては、ギルドに一部の素材を卸すかもしれませんし。」
「おう。とりあえず、出してくれ。マジックバックか収納で持ち込んでいるんじゃろ?」
僕が、「まあ、そんなところです。では、」と、その場へワイバーンの胴体と頭を並べて出す。
「ほお。これだけきれいに仕留められているのは、久々に見たな。確かに内緒にせんとならんな。」
「一応、時間停止で収納していたので、血もそのまま使えると思います。それも考慮してください。あと、ほかにもいくつかありますが、今出しますか?」
ギルドマスターが「おいおい、本当に小僧が仕留めたのか?ワイバーンだぞ。」
「うるさいのう。坊主、何があるかわからんから、一旦出してくれ。それで、受け付けるか決めるからのぉ。」
「わかりました。では。」と、魔の森中層で修行で狩ってきたギガディア、ギガファングボア、マウントロックタートル、フレームベアーを出していく。
「ほう。大物じゃのぉ。これは、ギガディアまでじゃの。あとは、後日ということにしてくれんか?秘密を守れる解体師が少ないからのぉ。」
「わかりました。じゃあ。可食部の半分は残してね。受け取りに来ますから、間に合えば、次に持ってきた時に受け取りたいな。」とギガファングボア、マウントロックタートル、フレームベアーを収納した。
ギルドマスターが「おいおい、すごいじゃないか。買取は、どうする?」とうるさい。
僕が、「誰がここに卸すと言いました?さっきの謝罪も受け入れていませんよ?あの冒険者の処分も、しっかり聞けていませんし。」
カフールさんが「バンガス親方、お願いしますね。では、盗賊討伐に行きましょうか?解体場には被害が出ないようにしますので。」
「おう、わかった。いい加減、解体場の奴らも、冒険者の質が下がって、ぼろぼろの獲物ばかり持ち込んではごねるから、不満がたまっておる。しっかりしつけてくれや。」
ギルドマスターが「やめてって言っているのに。」と叫んでいる。
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