この作品は勘違いタグがありますが、この勘違いには『勘違いしている』と『勘違いされている』の二つの側面があり、
実際に起きてることと、他人からの目線、本人の認識で全て異なる出来事が起きている。そういう側面が含まれます。
それは言ってしまえば極めて当たり前のことなのですが、人の立場や認識で同じ出来事を同じように見ることはできない。
だけど、誰も確認しないからその“ズレ”を正せないまま流れていく、
これがこの作品における重要な要素の一つと見て間違いないでしょう。
あと、一応TS転生ものの要素が含まれますが、これは一人称視点になったときの地の文を書きやすくするための工夫ですね。
『作中でTSが絶対に重要か? 別の要素でもよかったのではない?』
そう問われると決してそんなことは無いけども、主人公のパーソナリティにおいてはとても重要なことで、だが、周囲はその曖昧な自己認識を理解できないから彼女に神秘性を見出す。という、作中の根幹を成す勘違いの構図において重要な要素にはなっています。
この作品の強みはやはり、
曖昧な認識の主人公、
それに奇異の目を向ける周囲、
後から少しずつ開示される事実、
その三つが毎回バラバラである人の認識の曖昧さをシリアスなシチュエーションとして描きながらも、主人公自身は明るい思考で語り部をすることが多いため、作品自体は明るい雰囲気であることだと思います。