極秘文書や視点の切り替えを用いた構成が印象的で、世界観が少しずつ立ち上がっていく感覚が心地よい作品。人工知能、脳の進化、地下世界という重厚な題材を扱いながらも、人物同士の距離感や会話が丁寧で、単なるSF設定語りに終わっていない点が魅力です。特に価値観の異なる立場が自然に交差していく流れは読み応えがあり、「正しさとは何か」を読者に静かに問いかけてきます。断片的に示される情報が強い引力を持っており、物語がどこへ向かうのか非常に気になります。今後の展開とテーマの深化に期待したい一作。