第2話 父さんな、デスゲームで飯を食ってたんだ②


私の名前はティーダ。人間の生命を司る存在。人間が言うところの女神だ。

自分で言うの何だか嫌だな。


「ギルドで迂闊な事を言われてもあれなので魂だけを私の領域まで飛ばしました」

「おぉ」


少年だった存在は軽く驚いたように周囲を見渡す。いや、もっと驚け。いきなり別空間に飛ばしたんだぞ。


「女神よ、お初にお目にかかる。タケシだ。それとも北野士郎を名乗るべきか」


タケシはそう言って一礼する。シルクハットでもあるかのような仕草だ。一応敬う素振りはしてくれるようだ。


「感謝してくださいね。あの場で別室に呼んだら悪目立ちしたんですからね」


彼には年上を一切敬う素振りはないが、罪を犯したわけでもない。新人冒険者が何も悪いことをしてないのに裏に呼び出されて変な印象を持たれたらマイナスだ。冒険者というのはシビアな職だ。可能な限り障害は取り除いておきたい。いやでもこいつ、わざわざややこしい書類を作った奴だったな。そこまで配慮はいらなかったか。


「前世を思い出したのはいつですか?」

「受け取った書類を読み始めたあたりだな。そのせいでワインが飲みたくなって仕方がなかったんだぞ」


嗚呼。そのまま思い出さなければ利発的で素敵な少年のままだったのに。

というか前世を思い出したらワインを飲みたくなるってなんだ。そんなワイン狂いだったのかコイツ。


「最期はゲームを勝ち抜いた少年と銃を構えあっていたな。震えを必死に抑えていた少年に撃てるか?撃った先は考えているか?と語りかけていた」

「はぁ」


何か語りだした。


「最期に聞いた言葉は お前はみんなの仇だ! だったな」

「・・・あー! あーーー!!!!」


思い出した!!コイツ、15年前に拾い損ねた男の子を殺す予定だった奴じゃん!!前職デスゲームの運営ってそういうことかよチクショウ!!


「何で貴方が転生してるんですか!!本来ならあっちの子だったはずなのに!!」

「ふむ?」


15年前、デスゲームに巻き込まれ、優勝するも黒幕に撃ち殺される予定の少年がいた。その少年の魂は生命力に溢れ、とても善性であった。だから記憶を引き継ぎ、特典を与えて転生させるつもりだった。

だが、少年は死なず、かわりに死んだのがコイツ。


「なんと、少年は運命を捻じ曲げたか!」


愉悦感じてるんじゃねーよ!てか、ワインが欲しいってこの感情を肴に飲みたいってことか!黒幕かよ!黒幕だわ!!


「あの少年は運命を捻じ曲げ、その残滓を持って、女神と再会したことで私も前世が目覚めてしまった といったところか」


とてもそれっぽい。転生の仕組みは私自身よくわかってないけど、凄くそれっぽい。あの子の余波でこんな奴が前世を思い出すのそれっぽすぎて嫌になる。


「とりあえず、戻りますか。向こうで変なことは喋らないでくださいね」


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