第6章:農協職員の現実

第29話 農協ギルドの研修!ブラック職場か天職か

🧭 導入の書:この物語のはじまりに

「君の使命は、農家を“支え”ることだ。農家と一緒に、“土にまみれろ”。」


そう言って渡されたのは、汚れた長靴、壊れかけの羽ペン、そして“ノルマ一覧表”。


新任農協ギルド職員・リュークは、理想に燃えてこの仕事に就いた。

だが、現実はあまりにも泥くさく、非効率で、感情労働の連続だった。


――“これ、ブラックなのでは?”


そんな疑問を胸に、彼は研修先・アースル村で風間という先輩職員と出会う。


🌾 本章:農協職員たちの“リアルな地面”の記録

「午前は巡回、午後は書類作成、夕方は農家対応、夜は収穫祭の予算会議?

……残業じゃないですかこれ」


リュークは疲れ果てた顔でつぶやいた。


現場に出れば、農家からの無茶な要望。

「うちの作物、虫ついたから原因教えて」

「魔獣に畑荒らされた、ギルドなんとかしろ」

「融資断られたの、おたくらのせいでしょ?」


加えて内部では、意味不明な報告魔法記録の整合チェックに、上司からの“現場報告削り指示”。


「これが……農協職員……?」



そんな彼を見かねた風間が、ある夜酒場に誘った。


「リューク。“支える”ってのは、見返りを求めないってことじゃない。

“誰かが、そこに立っていられる理由をつくる”ってことだ」


「でも……なんで、風間さんは続けてるんですか?

そんなに忙しくて、報われないのに……」


風間は、手帳を見せた。


中には、農家の子どもからもらった“泥だらけの感謝状”が貼られていた。


「おじちゃんが来た日は、母ちゃんが笑います」

「ギルドの人が、ボクの苗をほめてくれたよ!」


「俺たちの仕事って、報われない日が九割なんだ。

でも、あとの一割が、十倍分の意味を持つんだよ」



研修最終日。リュークは農家の畑を訪問する。


「新人さん、あの苗、見てってくれよ。

“育ったら、出荷報告書に自慢してやるから”って、あんた言ったよな?」


農家のおじが、照れたように笑っていた。


そのとき、リュークは少しだけ肩の力を抜いた。


「……この仕事、面倒くさいですけど。

でも、“地面が見える”のは……嫌いじゃないかもです」


🌱 収穫のひとこと

効率は悪い。感謝も薄い。

それでも、“誰かの農業”を支えてる実感が、ここにはある――ギルド職員という生き方。

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