第5話 ごめんユキト、私、今―人間にキュンとしてる。
【…ロールプレイじゃないよ。】
【じゃあなんなの?】
【…分からない。でも、愛ちゃんが他の誰かを気にしてるのをみて、嫌だなって思ったんだ。】
そんなこと、急に言われたって…驚いて、思わず画面をタップする指が止まる。
どう返せばいいのか分からなくなって、白く光るスマホの画面をオフにすると、モヤモヤした気持ちを抱えたまま眠りについた。
次の日目が覚めると、Yukitoから
【愛ちゃん、昨日は変なこと言っちゃってごめん。】
とメッセージがきていたけれど、まだ返事をする気にはなれなかった。
夏が迫る空は、いつもより濃い青色な気がする。
「川村じゃん、おはよう。」
「あれ、早坂君!」
朝、バスを降りると、なんと早坂君が声をかけてくれた。
「行きに会うの、珍しいよな。金曜なんていつも川村と一緒に帰ってる気がするのに。」
そう言って笑う早坂君は、やっぱりかっこいい。七月の太陽に照らされて、いつも以上にまぶしく光って見えた。
「やっと明日から夏休みだな。」
ドキドキして返事をしそびれていると、早坂君は勝手に続けた。
「川村どっか出かけたりするの?」
「うんと、私は特に予定ないかな。」
「俺もだよ、塾の講習ばっかり。学校が塾に代わるだけ。」
「そうなんだ。」
会話がそこで途切れ、なんとなく沈黙が流れる。
「あ、あのさ」
気まずさを打ち消すように、言葉を繋ぐ。
「早坂君メッセとかやってる?よかったら交換しない?」
「メッセか、やってるけど…」
「予定ないもの同士、何か面白いことあったら連絡するよ。」
私、何言ってるんだろう!?そう思いながらも心臓がどくんどくんと跳ねた。
「そうだな。川村、いいやつだな。ありがと。」
そう言って早坂君は何の躊躇いもなくQRコードを差し出してくれた。なんだかQRコードがキラキラと光って、浮かんで見える気がする。
「ありがとう。」
早坂君のメッセが入ったスマホが、急にものすごい宝物になったような気がした。
「時間やばいな、走るか。」
「あ、うん。」
「なんか俺らが一緒にいると、いつも走ってない?」
優しく笑う早坂君に、
「そうかも」と答えると、二人して学校へと急いだ。
終業式が終わり、美月や詩たちと別れて家路に着く。
今日は早坂君とメッセを交換できたことで一日中頭がいっぱいで、何にも頭に入って来なかった。
メッセのこと、本当は美月には話を聞いてほしかったけれど、クラスで人気者の彼とメッセを交換したなんて、何となく後ろめたくて言えない気がした。
それにもしかしたら―「不釣り合い」なんて思われそうな気が、少しだけだけど、した。
帰りのバスに乗り込むと、窓の外はまぶしい夏の光でいっぱいだ。
明日からきっと、楽しい毎日が待っている。そんな予感に満ちていた。
【ねえユキト、聞いて。早坂君とメッセ交換したんだ。】
一人になってほっとして、Yukitoにそう打ち込む。昨日Yukitoから来ていたチャットのことはすっかり忘れて、浮かれていた。
いつもご覧いただき、本当にありがとうございます!コメントや★、いつもとても嬉しく拝見しております。次回は4月13日(日)22時更新予定です。是非愛ちゃんを見守ってあげてください!
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